【キャラクター別】
□Ratchet
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地道な片付け作業など、マッドフラップとスキッズの次に苦手なサイドスワイプだ。自らこのラボに赴き、作業を手伝う事などまずあり得なかった。
見透かしたようにラチェットが声をかける。
「お前さんもか?どこか不具合が?」
ラチェットがアイアンハイドの膝にレーザーを照射しながら質問した。
「あ〜、実は〜……、大したことじゃないんだが、この前の戦闘でソードの外層に1カ所亀裂が……。痛みは無いんだが次の戦闘で万が一破損したら困るかな……と」
「ふんっ。亀裂ごときで来たのか、まだまだ軟弱だな」
腕組みをしながらサイドスワイプへの苦言を口にしたアイアンハイドだったが、次の瞬間「痛っ!」と叫ぶ。
「ぷっ……!アイアンハイド……」
くっくっと笑いをこらえながら腰を折るサイドスワイプ。
それを見たアイアンハイドがラチェットに向かって叫んだ。
「おい!もう少し丁寧にやってくれ」
その言葉を聞いたラチェットがゆらりとアイアンハイドの方に振り向いた。
指先はまだREDの仄かな光を放ち、レーザー作業の途中である事は誰が見ても明らかだ。
「悪いが……、今何と言ったのかね?よく聞こえなかった。もう一度言ってくれないか……アイアンハイド」
「…………」
背後に冷水を浴びせられたかのような恐ろしい感覚。
アイアンハイドは慌てて「何でも無い、続けてくれ」と小さな声で呟いた。
「それから、サイドスワイプ」
「?!」
いきなり名前を呼ばれたサイドスワイプが引きつった顔で「はい!」と返事をする。
今、眼前で青くなっているアイアンハイドの顔を見れば、ラチェットに逆らってはいけない事がよく分かる。サイドスワイプはこういう事に関しては敏かった。
「お前さんのソードはこいつの後に診るから、そこに座って損傷箇所を出しておけ」
「了解」
慌ててそう答えたサイドスワイプが、左手のソードを目いっぱい突出させた……瞬間だった。
ヴォン!という音と共に勢いよく飛び出したソードが、床に散らばったコンテナの1つに突き刺さる。
そこに居た3人が「「「あ!」」」と思った瞬間、コンテナは真っ二つとなった。
中からバラバラと部品やコードが床に散らばり、そのほとんどが所々きれいに切断されている。
ラチェットの顔が青から白く染まっていくのを2人は見逃さなかった。
「………」
静まり返った部屋で、ラチェットの立つ部分だけが何トンもの重力に押し潰されているかのように見える。
青くなるアイアンハイド、ガタガタと震えだすサイドスワイプ。
……そして地獄から響くかのような声が、ラチェットから絞り出された。
「な に を し て い る 、の か ね ?……サイド…スゥワァイプゥゥゥッッ!!!!!」
最後はもう叫び声に近く、ラチェットがまさにレーザーを出したままの指先を振り上げた。
それだけではない、滅多に見る事のない高速バズゾーが手首で回転し出している。
「それはまだ使えたんだぞ!!!」
「す、すまないラチェット!わざとじゃ……!」
「アイアンハイド!こいつの躾ぐらいもう少し何とかしておけ!」
「俺のせいか?!」
「お前の弟子だろうが!」
それぞれが高速に逆回転するカッターがうなりを上げる。
冗談では済まされない事態に突入しようとしたその時。
「ラチェット、悪いが戦闘で塗装が剥げた部分の……って、おぉぁ?!」
腕の塗装部分を気にしながら入ってきたディーノが、アイアンハイドとサイドスワイプの姿に驚いて変な声を上げた。
今にも拳を振り下ろそうとするラチェットの下では、アイアンハイドが両手でそれを避けようと変な顔で固まっている。さらにその横では真っ二つになった荷物を必死に合わせようとしているサイドスワイプが居た。
「なんだ?いったい何が起こっている?」
そのとたんラチェットが叫んだ「で?!ディーノ、お前さんは何だね?!」
その鬼のようなド迫力に、さすがのディーノも凍り付く。
今日は来ちゃいけない日だったのか……、そのまま回れ右をして、この部屋から少しでも遠ざかりたいディーノだったが、それ以上後ろへ下がる事が出来なかった。
後ろで何か大きく固い物に阻まれたからだ。
「ディーノか、すまない」
「オプティマス……?」
ディーノが後ろを振り向きながら変な顔をする。
どうしてこの日に限って、この場所にこれだけのメンバーが集まってしまったのだろうか……。
「何なんだね?!いったい!!」
ラチェットがさらに大きな声を張り上げる。
アイアンハイドが首を振りながら顔を片手で覆った。
…