【キャラクター別】

□Bumblebee
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Bumblebee/2



女の子はニコニコしながら、バンブルビーのヘッドライト部分をいい子いい子と撫で回している。
ほのかな温かさが神経回路を経て、バンブルビーのスパークへと流れこんできた。

何とか気にしないようにできるだけ冷静さを保とうとしても無理だ。その小さな手の動きにどうしたって神経がいってしまう。

バンブルビーにしてみれば、本当に小さな小さな手のひらだった。

普段一緒に過ごすことの多い、サムや他の軍人たちとはまったく違う・・・それは、あまりにも儚く、触れれば壊れてしまいそうな小さな手だった。

こんなに小さな手に触れられたことは、地球に降り立ってから今日まで一度だって無かった。

だいたい地球でいう年齢なら、5歳前後であろうか・・・可愛らしいとび色の瞳にバンブルビーの黄色い車体が映りこんいるのがよく分かる。

女の子は、なかなかバンブルビーから手を離さなかった。
ヘッドライトから車体の側面へ回ると、今度は背伸びして窓の中を覗こうと必死だ。


―思わず頬笑みが漏れた。
『可愛いな・・・小さいから、全然手が届いてないや』


女の子がピョコピョコと何度も爪先立ちしている姿があまりにも可愛らしく、バンブルビーはしばらく窓にかけられた手をこそばゆく感じながらも、そのひと時にホッとするような不思議な安心感を感じていた。
…が、ふいに声が響く。

「何やってるの?だめでしょう」

女の子と一緒にバンブルビーも振り向くと、そこには先ほどの女性が立っていた。
女の子はかまわずニッコリ笑うと舌足らずな声でこう言った。

「ママ、このブーブーね、ケイティを見たのよ!生きてるの!」

《生きてるの》の所で、バンブルビーは今度こそ本当に少しだけ車体が揺れてしまった。
それを見た母親が、一瞬怪訝そうな表情をしたが、そのまま女の子の手をとった。

「おバカさんね、ケイティ・・・車が生きてるわけないでしょう?さぁ、おうちに帰りましょう、ね?」

「いやよぉー、ケイティはこの黄色いブーブーと遊びたいの!」

「何を言ってるの、これはよそのおうちの車よ?さぁ帰りましょう」


バンブルビーはヤキモキした。
もしも、このまま女の子が居座りカマロの持ち主を待つなどということにでもなったらどうしよう。
もちろん、ここでトランスフォームするわけにもいかない。

本部に連絡して誰かに来てもらった方が良いのだろうか?・・しかし、こんな事で呼び出すのも・・と、考えていたら、すぐ傍から知った声がした。

「どうしました?俺の車に何か?」

そこには、私服のレノックスが軍では滅多に見られないとびきり爽やかな笑顔で立っていた。

思わず吹き出しそうになるのをこらえながら、バンブルビーはじっと動かず親子の反応をうかがった。

「ああ、申し訳ありません・・娘があなたの車を気に入ってしまって、ご迷惑でしたね。・・・さっ、ケイティ帰りますよ、おじちゃんにご挨拶は?」

―ぷっっ!!

おじちゃんと呼ばれたレノックスの笑顔がかなり引きつっている。バンブルビーは思わず車体を震わした。




つづく
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