【キャラクター別】

□Optimus
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――それは、長い長い眠りだった。

寝ているという感覚ではない。

深く、重い空間にただ横たわり、浮いてるでも沈むでもない自分の身体が、いや……、ただぼんやりとした意識だけがそこにある……そんな感覚だった。
そのぼんやりとした意識の中で、オプティマスは自分がどうしてこんな場所で横たわっているかを考える。



――ボディが破損したのであろうか?
――それともただインターバルをとっているだけなのであろうか?



それとも………

とうとう、自分の番が来たのであろうか?



何万年もの永い時を、多くの仲間と共に歩んできた。
惑星も都市も、仲間も友も、全てが酷く傷つき、そしてその最後をいつも苦渋の中で見つめてきた。

見たくて見ていたわけではない。
出来る事なら阻止し、自分が身代りになっても良いと何度も心から思った。

だが、時はいつもわたしでは無い“ 誰か ”を選択した。

苦しいのか悲しいのかすらも区別のつかぬ旋律と、ただ虚空な感覚、絶叫。

スパークが尽きるその瞬間まで戦う事をあきらめなかった仲間の思いが、いつも自分の身体を嫌というほど軋ませ深く深く傷を付けていく。

耐えねばと、その都度自分に言い聞かせてきたが、それは時に『司令官』という、どうしようもない孤独と絶望を嫌というほど感じるに等しい行為でもあった。

それでも強くあらねばと、誰かにこの思いを代わらせる事だけしたくないと、ここまでやって来たのだ。

実際、無理以上の事ばかりだった。
もっと誰かを頼り、強さを分かち合っても良かったのではないだろうか?と悔いる事も多い。


―― これは報いなのだ ――


自分の弱さを隠し、常に強くあらねばと前進した結果、多くの友を失ってしまった報い……。


そこまで考えた時だった。
どこからか声が重なる。

『わたしの名前を呼んでいるのか?――』

オプティマスはひたすら声の行方を探すように、動かない首を何とか捩じろうとした。

少しずつ大きくなる声とともに、無色だった空間に突然形容しがたい色が重なり始める。



―― そして ――



「目が覚めましたか?」

突然、ラチェットの少し動揺した声が聴覚センサーから直に響いてきた。

「司令官、見えますか?」ディーノだろうか?

「おい、オプティマス!分かるか」アイアンハイドの声だ。

「“ ヨカッタ ”“ コレデモウダイジョウブ! ”」バンブルビー……。

更に他の懐かしい声達が幾重にも響く。


『――あぁ、わたしはまだ生きていていいのだろうか?』


悔恨にも似た思いと同時に、どうしようもない喜びと懐かしさがスパークいっぱいに広がった。


「“ ハレルヤ!! ”」


バンブルビーの嬉しそうなラジオ音声が部屋中に響く。

「静かにしないか、まだ司令官は安静にせねばいけない状態だ」

ラチェットの声がはしゃぐ部下達を静かにたしなめる。

オプティマスは安堵の吐息を洩らすと、もう一度静かに目を閉じた。

ここがわたしの居る場所なのだ……と、それだけで今はもう充分であった。



少しでも負荷を減らそうと、ラチェットが手際よく回路をダウンさせていく。

オプティマスは急速な眠りに落ちていくような感覚に包まれた。

冷たかったボディに広がる不思議な温かさと、まばゆい色たち……、そのまま安堵の表情を浮かべると、ゆっくり意識を手放した。



fin.



(2015 07 15)


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