【キャラクター別】
□Bumblebee
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Bumblebee/1
―そんな日もあっていい
小さな子供が公園のそばのカフェテリアで母親とランチをとっている。
ちょうど2人分に具合の良い窓際のテーブル席に座り、女の子は目の前に並んだハムと卵のサンドウィッチを頬張りながら、オレンジ色をした液体の入っているグラスに手を伸ばそうとそうとがんばっていた。
モグモグと動く可愛らしいその小さな口元には、パンくずがたくさん付いており、母親らしき優しい目をした女性が時折その口元にそっとナプキンを当ててやっている。
バンブルビーは、その様子をカマロの姿で道路のこちら側からじっと見つめていたが、その目には小さな羨望と悲しそうな色が浮かんでいた。
地球でのこうした平和な日々が、時に心を重くする時もある。
自分たちの星にも、いつかはこんな風に幸せな時が来るのだろうか?と。
そんな事を考えていた時だった。
ふいにその女の子が、バンブルビーに向かって手を振ったのだ。
あまりに突然で、バンブルビーはドキリとした。少し車体を揺らしてしまったかもしれない。
―まさか気付いてる?おいらに?
あり得ない。何か他のものに手を振ったに違いない。
・・そう思い直すと、又何事もなかったかのように"カマロ"としてあるべき姿のまま沈黙を守ることに専念したが、センサーはカフェテリアの女の子に集中していた。
女の子は、しきりに母親に向かって身振り手振りで何かを話している。
そして、とうとう母親までがこちらの方を向くと少し不思議そうな目でバンブルビーを見つめてきた。
―なんで?!
周りは街路樹が立ち並び、すぐ横に大きな公園の入り口がある。歩いている親子連れやカップルも多い。
きっと、何か他に女の子が興味を示すものが――何かあるはずだ!そうじゃなきゃおかしい。
バンブルビーは慌てて自分の周囲1k圏内にセンサーネットを張った。
センサーを張ったその動向は、本部にいる仲間にもすぐ伝わった。
『どうしたバンブルビー?何かあったのか』
すぐに体内回線が開き、アイアンハイドが問いかけてくる。
すぐ傍にはきっと司令官もいるはずだ。
バンブルビーはちょっとドキマギしながら、こんな事を報告すべきかどうか迷い・・
―やめた。
そしてすぐにこう返事をした。
『 "すまない、君を混乱させてしまって" "今のは何でもない!" 』
ラジオの音声を巧みに使ってアイアンハイドに返事を送る。
『驚かすな。ターゲットを見つけてシステムを作動させたのかと思ったぞ――なんでもないオプティマス。バンブルビーの誤報だ』
少し遠ざかったような音声でアイアンハイドがオプティマスにも通信を送っている。
『 "しかし" "待ってくれ兄弟!" 』
『なんだ』
『・・・・・・・・』
バンブルビーは言葉に詰まって・・・・・あきらめた。
『 "すまなかった、それはもう済んだ事だ。忘れてくれ" "任務続行せよ!" 』
『ああ、なんかあったら知らせて来い。勝手に一人で動くなよ』
いつも通り、ぶっきらぼうな・・しかし、バンブルビーの身をきちんと案じている事が分かるアイアンハイドの言葉を最後に通信は切れた。
"ふ〜・・"と、ため息が漏れる。
まさか、人間の女の子がおいらに手を振りました・・なんて言えるわけないよ。
バンブルビーは、あらためて任務を続行すべく周囲を警戒し、もう一度女の子を見ようとした。
その瞬間!・・・思わず又、車体を揺らしてしまったかもしれない。
先ほどまでカフェテリアにいたはずの女の子が目の前に立っている。
もう少しでトランスフォームしてしまうほど驚いたバンブルビーは、まだバクバクと音を立てているスパークをできるだけ静めると、力の限り沈黙した。
つづく
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バンブルビーを書こうとすると、なぜか可愛い話になってしまうのはなぜだろうv