Love and Happiness

□みちくさ
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体勢を立て直しながら照れ隠しに知っていることを尋ねた。

「うん」

でも、とまーちゃんは続ける。

「もう引退したから」
「そっか。じゃあ今は勉強一筋なんだ」
「俺、就職組だから」
「え?」

彼の通う高校は、県内でも屈指の進学校だ。隣の家の事情まではわからないけど、どうして就職なんだろう。

「そう、なんだ」
「うん」

よくわからないことを突っ込んで聞いても仕方ない。でも昨日すみれちゃんに会った時、そんな話は全くなかったのに……ていうか、まーちゃんの話はしてなかったような。

『XX高校前ー』

アナウンスの声にまーちゃんは小さく、じゃあ、と言ってバスから降りて行った。



「それってやっぱり家計の事情じゃないですかね」

お昼休み、私は後輩の男の子に何気なく尋ねてみた。進学校へ行っているのに進学しない理由ってなんだろう、って。

「そうかなぁ。でも……」

くるりと紙コップをゆっくりまわすとコーヒーの香りが揺れる。寄りかかっている廊下の壁はひんやり冷たかった。
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