キャラクター紹介

□翼防衛戦争開始
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――パァン!

渇いた音。

鮮血に飛び散る赤色。

カランカランと床を転がる薬莢。

「……………」

スカートの下に隠したガンホルダーに使い慣れた拳銃をしまう。

「……………」

的は動かなくなった。

訓練は終了。


「…お前、顔色一つ変えねぇのな」

「……………」

訓練が終わるまでは絶対に開かない筈の扉から、同い年くらいの少年が現れた。

「“俺”が最後の的らしいぞ?
ちなみに、俺の最後の的は“お前”だけどな」

「…………」

「お前名前は?」

「…………212」

「番号なんか聞いてねぇよ」

「…………しらない」

「じゃあ俺が付けてやるよ。
お前の名前は――――」







「―――ユウちゃん!」

…ッ!?

「ユウちゃん!?」

ツバサの声で、我に返った。

………あたしの馬鹿。

「…大丈夫よ。
悪いわね、少し考え事してたの…」

「ううん、気にしないでいいんだよ。
…それよりも、考え事って?」

「ん〜。
昔の事を、ちょっとね」

あははと、笑ってごまかす。

…今迄ずっと、“覚悟”はしてきたつもりだったのに。

ぎゅっと拳を握り締める。

「…そうなんだ」

雰囲気を察したのか、ツバサはそれ以上、その事に関しては何も言わなかった。
代わりに、「…怒ってるの?」という別次元のあたしと喋ってたくらい唐突に繋がりのないセリフを言う。

「………、なんでそうなるのよ?」

「…だってさっきクロ君。
『お前の心配なんてしねぇよ』ってユウちゃんに…。
私、クロ君があんな事言う人だなんて思わなかったんだよ!」

珍しく眉を吊り上げて“怒る”ツバサ。
アンタが怒ってたから、そんな事聞いてきたのね。

内心で納得しながら、「違うわよ」とあたしは微笑む。

「…え?」

「…まぁ、こっぱずかしい話になっちゃうんだけどね。
アイツのあのセリフには、続きがあるのよ」

「続き?」

「『信じてるからな』。
…昔、そう丁度六年前にも、言われたセリフよ」

「…信じてる、か。
なんだか羨ましいんだよ、二人の関係」

「あたしがあたしになった時からの、長い付き合いだしね。
ツバサもその内、腐り過ぎてこの世の物体じゃなくなるわよ」

「…何が?」

「縁」

一文字一文字区切るように言い、ツバサの右腕を引っ張る。

ぐいっ

「ふぇっ」とツバサがあたしの胸に飛び込んで来た。
それを抱きしめて、その場所から離れるように前にジャンプする。


ドゴボォッ!!


あたし達が歩いていた辺り一帯がクレータのように陥没した。

「………っ!!」

胸の中で、ツバサの息を飲む声が聞こえる。

タンッと軽やかに着地して、振り返った。

『初めまして。』

スケッチブックを左手に、大きな大剣を右手に持った、コートにフードに仮面で全身を隠した(多分)男。

「…不審者?」

最もな反応するツバサ。

…世も末かしらね。

嘆息しながら、それでも視線はコートの男から反らさない。

ペラリ

左手だけで起用にめくったスケッチブックには、
『上谷ツバサを、渡してもらう。』
と、ただ一行の文が書かれていた。

「…ったく」 と舌打ち。

「どいつもこいつも、ツバサを狙ってんじゃないわよッ!」

あたしの剣幕に怯えたツバサが、ペタンと尻餅着いたのが――

――戦闘開始の合図だった。
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