第一章
□日常という名のプロローグ
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それは、普通じゃない出来事だった。
特殊能力を使える訳でもない。
ハイテクなロボットに乗れる才能を兼ね備えている訳でもない。
ごくありふれた、普通の高校生――ミナトにとって、それは普通じゃない出来事だった。
「怪我はない?」
――赤くて、紅くて、朱い髪の“誰か”は、ミナトを見てそう微笑んだ。
(…なんで女の子が…!?)
思考が緊急停止する。
その綺麗で艶やかな赤い瞳に、まるで吸い込まれそうになってしまう。
見蕩れていた。
ついさっき起きた、“普通じゃない出来事”も、忘れてしまうくらい、
ミナトはその子に見蕩れていた。
「…あ、ああ平気だ」
「うん、良かった。
ボクはエイン」
そう名乗ったエインに対して「…俺はミナトだ」と、戸惑いながら返す。
エインは再び微笑んで、
「うん、覚えたヨ」
と頷いた。
この出会い――エインとの出会いこそが、水樹ミナトの日常が“普通”から“異常”へと変わる始まりだった。