第一章

□人の証
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夜天の下。
商店街。
クレープ屋。
もう既に他の生徒達は寝静まったような時間帯だった。
命掛けの戦いが商店街なんかで行われているとは、誰も想像すらしないだろう。

「…魔法って!?」

エインは言った。
今のミナトなら魔法が使えるかもしれない、と。

「んな無茶だろ!?
魔力とか全く使い方分かんねぇし!!」

「…聞いて、ミナト。
ユエは強い。
彼女一人で、冗談抜きで核爆弾と同等の力を秘めていると言ってもいい。
今のキミとボクじゃきっと勝てない」

「…はぁ!?
…ちょ核爆弾って!?」

例えの規模デカ過ぎだろ!?
と続けて言い掛けて――目の前で焼け焦げるスーパーマーケットがミナトの目に入った。

「…い…いや…ま、まさか…」

「…あはは、嘘みたいな話だけど本当の事なんだヨ」

エインは笑えていない。
その笑顔は引き攣っている。
それはミナトも同じだった。
(…笑えねぇ。
つか、この状況で笑えるか…ッ!?)

「…ねぇミナト
やっぱり、友達になるの止める?」

エインは優しい瞳でそう言った。
逃げてもいい。
そう安易にエインは伝えている。
(……………)
“儂と一瞬にいても傷付かない強さ”。
ユエのその言葉。
嬉しそうに言っていたその言葉。

「はっ、まさか。
変わった友達の一人くらい、いくらでも受け入れてやるぜ。
俺の周りは、変人ばっかだからな」

それは、ミナトにとって精一杯の虚勢だった。
それでもエインは、やっぱりネと笑ってくれた。

「なら、ボクが時間を稼ぐヨ」

「え?」

「キミが魔法を使えるようになるまで、ボクが時間を稼ぐ」

「い、いやそれこそ無茶だろッ!?」

「信じて」

「え?」

「信じて、ボクの事を」

「…エイン」

「ボクはキミを信じる。
だからキミもボクを、信じて」

信じる。
信用する。
信頼する。
それはとても簡単な事のようで、とても難しい事。
二人は出会ってからまだ、一日だって経過していない。
それでもエインはミナトを信じる、と決意を持って告げたのだ。

「…心配しあう事や助け合う事だけが、…その、友達じゃないヨ」

えへへ、と照れ臭そうにエインははにかむ。

「…あ、いや…友達だなんておこがましかったかな?」

「そうだな」

「…え?」

「俺とお前は友達じゃなくて、もう親友なんだから」

ミナトは続けて。

「分かったよ。
エインに任せる――いやエインを信じる。
必ず魔法を使えるようになってやる。
だから時間稼ぎ頼むぜ、相棒」

右拳を突き出す。

「うん!」

エインも同じように突き出し、こつんと小さな音が鳴った。
出会って間もない二人。
普通と異常の二人。
その二人の間に、とてもとても強い絆が固く固く結ばれた。
異常のエインは親友の為に、機械人形<オートマタ>へと挑む。
普通のミナトは親友の為に異常への階段を駆け上がる。
二人が戦う理由はただ一つ。
掛け替えのない、友の為に。

「あ、待ってミナト」

「ん?」

「ケータイかして」

「いいけど、何すんだよ?」

「おまじないだヨ♪
携帯におまじない掛けとくから、身の危険を感じたら見てネ」

「…おまじない?」

訳が分からないミナトだったが、とりあえずエインに携帯を差し出した。
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