キャラクター紹介

□翼防衛戦争開始
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「やっと着いた〜」

駅に着いた瞬間、そう言って…はぁはぁと息を切らすのは上谷ツバサ。
金髪のロングヘアーにルビーのような紅い瞳。
何より特徴的なのは服の上からでも自己主張の激しい胸で、着慣れてない赤のブレザーに黒のスカートが初々しさを醸し出している。

「どうして十五分もかかるのよ!?
蛙の小隊レベルじゃない!!」

その隣には、まだまだ余裕と言わんばかりに元気な幼馴染み、通称“ユウ”。
銀色のツインテールに大きな目、それにスラリとした身体。
残念ながらツバサと比べると胸は見劣りしてしまがはッ!!

「…ユウ。
なんで急に鳩尾…?」

ぐふっ、と地面に手をつく。

「失礼な事考えたわよね?」

…鋭い!!
流石付き合いが長いだけある。

「…ま、まさか〜。
ユウの胸がツバサと比べると小さいなんてこれっぽっちも思ってねぇよ」

て、俺のバカ!!

「「くたばりやがれぇえ!!」」

ガツン?
いやゴツン?

まあ擬音なんてどうでもいいよな?

死んだおばあちゃんに出会った。

たった、それだけの事だった。



…数分後。



「…クロ、起きなさい」

ゴスッ!!

「…クロ君、起きて」

ドスッ!!

何故だろう?
必要以上に鳩尾が殴打されてる気がする。

「…全然起きないんだよ?」

「仕方ないわね。
ゴム無しバンジーでもさせる?」

「それは画期的なアイディアだね!!」

「それは確実に死ぬッ!!」

「「あ、起きた」」

二人はニッコリ笑って声を揃えた。

起こし方さえ鳩尾殴打に脅迫じゃなかったら、最高だったのに。

…鳩尾がとても痛い。

「…ここどこだ?」

辺りを見回してみると、滑り台、シーソー、鉄棒、砂場などがあった。

…公園、か。

どうやら俺は、駅の近くの公園のベンチに寝かされていたようだった。

固いベンチから身体を起こして立ち上がる。

「気絶したアンタ連れてここまでくるの、大変だったんだからね」

…いや、気絶したの誰のせいだよ。 誰の。

携帯で時刻を確認すると、もうとっくに『約束の時間』を過ぎてしまっていた。

…ミナ達には、悪い事したな。


『輝手公園』

看板のような、表札のような、二つを足して割ったようなモノには、この公園の名前が書いてあった。

…てるて、で読み方はあってるのか?

公園には俺達以外誰もいない。

この町の人口が少ないのもあるのだろうし、子供達は五時のチャイムが鳴ったら帰るからだろう。

「…これからどうするの?」

そう切り出したのはツバサ。
明るく振る舞ってはいるが、内心はとても不安なのだと思う。

拳銃なんて物騒な物を持った奴らに、意味も分からないまま狙われているんだから。

「安全な場所にツバサを逃がして、その後、警察に通報しよう」

「……警察、ね」

言ったユウと視線がぶつかる。
彼女は俺にしか分からないように頷き、続けた。

「あたしもそれでいいと思うわ。
問題はどこにツバサを逃がすかだけど…」

出来るだけツバサとあまり関わりのない場所がいい。
…となると。

「秘密基地はどうだ?」

「そうね。
あたしも同じ事考えたわ」

「…秘密基地?」

「昔、俺とユウの二人で作ったんだ」

まぁ、あんまり行きたくない場所ではあるけれど。

「…そう、なんだ。 …二人で……」

「…ツバサ。
アンタ何か勘違してるようだけど、秘密基地作ったのなんて、もう六年も昔の話よ」

…そう、もう六年も昔。
ユウは小さな声で、繰り返す。

「…いいのか? ユウ」

「……、大丈夫よ。
アンタはツバサの心配だけしてなさい」

「お前の心配なんかこれっぽっちもしてねぇよ」

「あっそ」

フンッとユウはそっぽを向く、それから、歩き出した、俺達の苦い過去が詰まった秘密基地へと―――。

「…クロ君?」

覗き込むようにツバサは俺を見た。
その顔は、やっぱり不安で雲っている。
それなのに、俺を心配してくれているのだろう。


くしゃくしゃ

ツバサの綺麗なブロンドの頭を少し無理矢理に撫でた。

「お前はユウと一緒に、先に秘密基地に行け。
俺は、食べられる物とか買って来るから」

最悪、秘密基地で泊まる事になるかも知れないしな。
と付け加えると、何を思ったのかツバサは顔を真っ赤に染め上げた。

「…う、うん。
分かったんだよ」

コクコクコクコク

高速で首を動かすツバサ。

「ツ〜バサ!
ほら、置いて行くわよ」

「いや、狙われてるツバサを置いてくなよ」

アホなのかアイツは。
バカなのかアイツは。

「…クロ君。 怪我しないように、ね」

「ああ、怪我しないことには定評のある俺だから大丈夫だ」

「ツ〜バサ!!」

「う、うん!
またね! クロ君!」

子供のようにユウの後を追うツバサ。

二人が角を曲がって、見えなくなったのを確認して、それから振り向く。


――輝手公園と書かれた看板のような表札ような二つを足して割ったようなモノの方へ。


「よ、初めましておっさん」

「おやおや、これは懇切丁寧にどうもだね。
…初めましてクロカミくん」

いつの間にか現れた――謎のおっさん。
厳密に言えば、俺が起きていた時には既にこの公園のこの場所に立っていた、おっさんだ。

「おっさんの狙いも、ツバサか?
ロットやポニテはともかく、アンタは洒落にならないぞ?」

犯罪的な意味で。

見た目もすっげぇだらしがないし。

「だからこそ、その役目を二人に任せたんだけどね。
…どうにも邪魔が入っちゃったみたいなんだよね」

「…邪魔、だと?」

俺達とコイツら以外にも、誰か動いてるってのか?

「…ややこしくなってきやがったな。
ま、とりあえず今は、アンタだおっさん」

「お手柔らかに頼むよ、クロカミくん」

不快に、おっさんは笑うのだった。
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