キャラクター紹介
□事件はいつも唐突に
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「ありがとうございましたー」
全国の定員さんに見習わせたいようなスーパー営業スマイルに見送られて、俺達は激安の殿堂を後にした。
「それにしても、沢山買ったんだよー!!」
ツバサはニッコリ笑う。
時刻は既に、日が傾きかける頃だった。
辺り一面がまるでトマトのように真っ赤に照らされる。
そろそろ一番星が見える頃だな。
とか、柄にもなくそんな事を、空を見上げて思う。
「とりあえず、一通りのパーティグッズは揃えたな」
「…一通り、ね」
幼馴染みは、とても真剣な表情で俺を見た。
「…な、何だよ?」
そして、ビシィッと俺の持っているビニール袋を指差した。
「亀って背中に書いてある戦闘服とか!
黒の死神が愛用しそうなマスクのどこに鍋パーティの要素があるのか説明してほしいわね!?」
…そ、それはっ!?
ギュッとビニール袋を握り締める。
「…いや、最近は超能力者やら、契約者やら、ニー〇レスやら、いろいろ増えてきたから、ここらで最強でもを決めとこうかなって思ってさ…」
「………………、アンタバカでしょ」
蛇に睨まれた蛙。
みたいな言葉があるくらいだが、コイツの視線は逆にその蛇が死んでしまうんじゃないかと思うくらいえげつないものだった。
「そんなの結局グダグダになって決まんないわよ。
ちょっと考えれば分かるでしょ、馬と鹿よりバカ太郎」
…相変わらず無茶苦茶言うなコイツ。
なんだかげんなりしてくる。
「ユウちゃん。
…流石にそれは言い過ぎだよ」
「…ツ、ツバサ…ッ!?」
それは思わぬ助け船だった。
ツバサは俺を庇うように間に割って入る。
いつもは少し天然気味の巨乳委員長だが、今日この瞬間の彼女は、まるで神話に出てくるような慈愛の女神様の様に見えた。
…やっぱりツバサは俺の味方だったんだな。
流石良心の擬人化さん。
素晴らしいよ!
「そんな言い方したら馬と鹿に失礼だよ!
馬鹿って言われる度に自分達の名前出される二頭の気持ちも少しは察してあげようよ!!」
「…あ、あれー…?」
「そうね。
じゃあ今度から紅瀬未来と書いて“バカ”と読む事にするわ。
これなら馬も鹿も、きっと大喜びよ」
「うん、そうだね。
これがハッピーエンドって言うんだね!!」
〜完〜
「って!終わるかッ!!
というか勝手に終わらせんなッ!」
「…いや、つい癖で」
「どんな癖ッ!?」
いつもの如く、ツッコミのテンションが高めのやり取りが展開される。
ちなみに、激安の殿堂の前で騒いでいるので回りの方々はとても迷惑そうにしていた。
「…しかし、実に残念なのだ。
このまま終わってくれさえすれば、次回から魔法少女リリカルレプロットが何ら問題なく始められたというのに…」
「始まるかっ!!
というか問題だらけだッ!!」
…て、あれ?
そこでふと気付く。
「…ロット…ッ!?」
うさみみゴスロリブラック少女は、フリー〇を倒した後、なんか普通に仲間になっているどこぞの王子並のさりげなさで、俺の隣に立っていた。
「いったいどうしてここに?
探しモノはいいのか?」
「ああ、それについては心配するな」と彼女はかぶりを振る。
「ちゃんと見つかったのだ」
それから、ニヤリと、不適に、少女は笑った。
「へぇ」と相槌を打ち、結局コイツの探しモノはなんだったんだ?と疑問に思う。
…まあ、見つかったのならいいか。
「………。
…それで、誰なの?
その電波ッ子は…」
と、ユウはレプロットを一線引いた感じで見詰める。
というか、確実にウサミミを凝視していた。
「電波ッ子ではない。
レプロットだ」
「えへへ〜♪
かわいいうさぎさんなんだよ〜」
幼馴染みと打って変わって、抱きしめるくらいの勢いで委員長は少女に近付く。
更に、わしゃわしゃとロットの頭をツバサは撫でる。
そして――
「…え?」
――ふと、彼女の手が止まった。
「…あな、た…ッ!?」
―ガチャ、ガチャン
「「は?」」
ツバサがロットの“何”に反応したのかもよく分からないまま、後方から聞こえた不快な金属音に対して、俺とユウは素っ頓狂な声をあげた。
………なッ…!?
ピタリと、背中に冷たい“何か”が押し当てられいるのが分かった。
「…下手に動こうとするな。
動けば、撃つッ!!」
更に金属音と同じ方向から、若い女の声が聞こえてきた。
そして事態は、
俺達の“日常”は、
急速に変化していく。