キャラクター紹介

□放課後
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「きおつけーれいっ!
さようなら〜」

日直当番の号令で、今日のかったりー一日が終わった。

中学二年生に進級したとはいえ、六割が同じメンツなので全然クラス替えした気にならない。

ガタリと椅子から立ち上がって、机の中のプリントをスクールバックに放り込む。

すると、後ろの方から「ミナ〜」と高い声が聞こえてきた。

「…ん?」

振り返るとそこには、見慣れた…というより見飽きたと言っていいほど付き合いが長い少女がいた。

「一緒に帰りましょう!!」

純度二百%の笑顔で彼女は笑う。
…彼女、クゥこと泉ソラを一言で表すなら天然。
人を疑う事なんて全く知らない、現代では珍しい奴だ。
しかも全体的になんでも出来る天才肌で、事態を常に良い方向へ持っていく為、他の奴らからは軽く神のように崇められ(慕わ)れている。

「ああ、別にいいぜ。
……、つか前から思ってたんだけど、何でいつも敬語なんだ?」

「…へ?
敬語ですか? 特に意識したことはないです。
…てゆうかその質問三百五十五回目ですよ?」

綺麗な金髪を髪留めを使って後ろで束ねている少女は、呆れるように溜め息を吐いた。
瞳は翡翠色と、髪も眼も真っ黒のあたしとしては羨ましい。

「…すげーな、数えてんのかよ?」

「ええ、なんかクセなんです」

彼女はニパッと笑う。
「ふーん」とあたしは頷いた後、スクールバックを肩に掛け、「じゃー行くか?」と教室の出入口へと歩き出す。

変なクセだな。
…つか、これも何回も聞いたような気がするな。

ガラガラ 質素な感じのドアを横にスライドさせる。

「…あの、ミナ。
ひとつ、聞いてもいいですか?」

教室から出て直ぐにクゥが隣に並んだ。

「なんだよ?」


「また女の子から告白されたんですか?」


ガン!!
思いっきり壁に頭をぶつけた。

「…それ、誰から聞いた?」

「リサちゃんです」

…あんにゃろ、どっからそんな情報を…ッ!!
ググッと拳を強く握りしめる。

「怖いですよ、ミナ」と、宥めるように彼女は笑う。

「…なぁ。
あたし、男に見えるか?」

「ん〜、そうですねぇ。
ミナは中性的な顔立ちしてますから、カッコヨクにもカワイラシクにも見えるんですよね」

「…そんなこと言われてもよー」

正直どうしようもない。
ぶつけた頭を押さえながら下駄箱から革靴を取り出す。

「まあ一番は、その男の子っぽい言動だと思いますけど?」

クゥも同じように革靴を取り出す。

「男の子っぽい言動って、あたし一応制服のスカート穿いてるぜ?」

「それは格好ですよ。
わたしが言ってるのは喋り方とか性格とかの事です」

「…喋り方に性格、ねぇ」

…小さい頃からずっとこんな感じだし、直すのなんて無理だな。

そんな話をしながら、あたし達は下駄箱から出て自転車置場へ足を向ける。
昼頃だけあってなんか食べたい気分だ。

「そうだっ!」

パンッと唐突にクゥが手を叩く。

「どうかしたか?」

「ええ。
髪を伸ばしたらどうですか?」

「は?」

「だから!
男の子に見えるのなら、女の子に見えるようにすればいいんですよっ!」

「……、髪か。
そうだな、考えとく」

言いながら自分の短い髪を触る。

「あとは、胸が大きくなればいいですね♪」



ガンッ!!
…思いっきり足を自転車にぶつけた。
ガタガタと音を立て、まるでドミノ崩しのように自転車が倒れていく。

「…ちょっと待て。
確かに百歩譲って小さいのは認める。
けど、クゥの方が小さいだろッ!!」

「…はぅっ!?
そ、そんなことはありませんよっ!!
わたしの方が大きいですっ!!」

顔を真っ赤にしてハムスターのように頬を膨らませるクゥ。

そんな小動物みたいな仕草をされると、女のあたしですら可愛いと思ってしう。
…流石、男子からモテる訳だ。

「……(顔を真っ赤にして反論してくるところがホントに可愛いですね。
わたしですらドキッとしてしまいました。
…流石、男女共に圧倒的にモテる訳です)」



「……そんで、お前ら顔真っ赤にして何見つめあってんだ?」


ガンッ!!
ゴンッ!!

鈍い音と共に、自転車ドミノは更に広がっていった。
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