Novel

□花火
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「ばーか。」


「……。」


「アーホ。」


「………。」



「し…」


「何なんだよ!さっきから。仕方ねぇだろ?」



「…仕方なくない…。宏之との花火、楽しみだったのに。」


今、言い合いになってるこいつ…宏之は、私の9つ年上の幼なじみ。


今日は、今年最後の花火大会。
毎年、宏之と行って居るから、今年も一緒に行けると思ってた……。


のに、宏之に彼女が出来たせい。




「そんなに…大事なの?彼女のこと。」



「……。」



そんな幸せそうな顔をしないでよ。



泣きそうになるのを堪えていると、携帯が鳴った。



「はい…?」


『よっ!元気してるか?』

「達也!久しぶり、どうしたの?」


『あのさ、今日の花火大会…一緒に行かね?』



「えっ?花火大会?」


電話をしながら、宏之をチラっと見る。

でも、お構い無しに雑誌を見てる。



「…うん、良いよ。」


『よっしゃ…じゃあ、浴衣着てこいよ?』


「へ?浴衣…うん、分かった。また、後でね(笑)」



電話を切り、浴衣の準備にかかろうとしていると、



「…良かったじゃん。行く相手が出来て。そのまま付き合ってみれば?」



胸が痛い。
そろそろ…限界だよ…。



「…そ、うだねっ。」


今まで、宏之の前で泣いたことなど、一度も無かったのに…。


堪えきれず涙が出てしまった。



「…ゆき…?」



宏之を置いて、家を飛び出た。



涙が止まらない。
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