企画物
□KOOL提出
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白いクリームを少し焦げたスポンジケーキにべらを使って丁寧に塗る。
いくつか赤い苺を規則的に並べれば、少々見栄えの悪いそれも、立派なケーキになる。
それからリビングを綺麗に片して、すぐに渡せるようにプレゼントを近くに準備すれば完璧だ。
今日は5月5日。愛しい彼、つまりデイダラの誕生日だ。
「上手く作れたようですねェ」
鬼鮫が完成したケーキを見て微笑みながら言った。
「見た目最悪だけどね…」
「そんなこと関係ないですよ。きっと喜びますよ、デイダラ。」
あなたが暁に来る前はいつもわたしが作ってましたから、と彼は苦笑い。
そうこうしている内に夜になって、デイダラが帰ってきた。
あたしが笑顔で「おかえりなさい」と言えば、彼は「ただいま、うん」と疲れているはずなのに、笑顔で返してくれた。
皆がリビングに集まる。
長い机の上にはいつもより豪華な食事が並んでいる。(その八割が鬼鮫が作ったものだが)
おめでとうと言いながら、皆一斉にクラッカーを鳴らす。
それに対し彼も有難うと嬉しそうに笑った。
「とりあえず早く食べようぜ!俺腹へったんだよ、なぁ角都」
「うるさい黙れ飛段」
「オイラも腹ぺこだ、うん。」
「じゃぁ食べよっか」
いつもの座に座ろうとした時(ゼツと角都さんの間)
ぐいっとデイダラに手を引かれた。
「今日はオイラの横に座れ、うん」
「え?」
ほんのり頬が赤く染まった彼は、隣のトビを無理矢理どかせた。(「先輩、酷いっス…」と渋々トビはどいた。)
「誕生日だからそれくらいいいよな、リーダー?」
「あぁ構わん。」
…実はここ暁は規則的な生活を送っているため、細かいこともリーダーが結構決めている。
つまり席順も。
「じ、じゃぁ遠慮なく…」
あたしは怖ず怖ずとデイダラの横に座った。
「へへっ」
デイダラは嬉しそうに笑うと、空いた方の手で、あたしの手を握った。(あたしは左利きだから)
机の下で…だから、皆には見えない。
あー、もうっ!
その笑顔でこの行動は反則だよ。素敵すぎるよ、デイダラ。
彼のおかげであたしはドキドキしっぱなしで、ろくにご飯を食べれなかった。(折角ご馳走なのにーっ!)
「はい、ケーキです!」
あたしが今日一生懸命作ったケーキを冷蔵庫から出してくると、歓声があがった。
「…これお前が作ったのか?」
「当たり前でしょ、失礼ねサソリは。」
「よくみてみろ…サソリ。クリームの塗り方は悪いし見栄えが悪い。」
…とか文句つけながらちゃっかりケーキを切り分けているイタチ。
デイダラの反応はというと…
「オイラめちゃくちゃ嬉しいぞ!」
「うわあっ」
感激のあまり抱き着いてきた。
「見栄えなんかどーでもいいんだ、うん。味は美味しいし!」
「本当?」
「うん。芸術的だぞ」
「…おいおい、イチャイチャするなら自室でやってくれないか?」
リーダーがケーキの苺を頬張りながら、怪しげに笑う。
「なっ…」
あたしが真っ赤になって反抗しようとすると、デイダラは
「それもそうだな、うん」
なんて言って、あたしの手を引いてリビングを出た。
「まだプレゼントも貰ってねーしな。…オイラ的には夜、貰いたいんだけど?うん?」
「…馬鹿」
特等席きみのトナリ
これからもずっと
あたしが貴方の隣で
貴方の誕生日を祝ってあげられたらいいな。
end
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