□No.04
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強く身体を揺さぶられる。




「……ふあ…」


重たい瞼を持ち上げると、朝の光が目に入ってくる。

「……ああ、ベア、起こしてくれたんだ。
……って、今、何時、」

時計を見ると、もうすでに学校へ行く時間。
もともと、低血圧の私が、朝早く起きるなんて最初から無理な話だった。

昨日、夜遅くまで起きて髪色を抑えただけあって、いつもと変わらない亜麻色に戻っていた。
まあ、どこで寝たかは適当に言い訳すればいい。

でも、これから任務が増えるとなると、毎回こうしてるわけにもいかないし、亜麻色のカツラと水で落ちるタイプの髪染めを買っておいたほうがいいな。


「ベア、ちょっと買い物頼めるか?」


こくん、と頷いてくれたので、カツラと髪染め、その他諸々の買出しを頼んでいく。
はげてもないのに、カツラが必須になるなんて、なんか切ない。
変装は好きなんだけどなあ。

そんなことを考えながら、蜜柑は着替えて、学校へ向かった。










「佐倉蜜柑、正真正銘のアリスです」

私が自己紹介していると、クラスがざわめく。
そんなにあの場所は恐れられているのか。
かなり好都合だ。
人が来なくて木があって、ベアがいるあの森ほど、自分にとって心地よいものはない。


何人か話しかけてくれる。
こうやってると、自分も年相応に戻ったかのように感じて、嬉しかった。


「はいはい、みんな静かにー!」

「……鳴海先生ってB組の担任やったんや」

「あれ?知らなかったっけ?僕、忙しくていろいろまかせっきりなんだよね〜」

わかるわけないだろ。
まかっせきりとか、もう担任とか言わない。
ていうか、あの服が誰にも突っ込まれないってどうなんだよ。

何かいろいろ複雑だ。
あいつ、あんななりしてるけど感良さそうなんだよなー。


「さてと、棗君がまだ来てないみたいだねv
サボりか遅刻かな?」


あいつ、来てないのか。
任務のときは普通に居た。
罰則はなかったと思ったのに、あの後、ペルソナに捕まったか。




――ガチャッ


「棗っ」

そこに立っていたのは、今にも倒れそうな日向棗。
首と手足に、いくつもの縛られた痕と傷、それに罰則面。
……ペルソナの奴、やりすぎだ。



「あの後捕まっちゃったわけだ?……彼に」

「るせえ」

周りが、ざわめく。
恐れている声、心配そうな声、いろいろ混じっていた。

「棗…」

「……心配すんな流架」

あいつは心配かけないように振舞う姿が、自分を大切に想っている者にとっては、助長されることを知ってるのだろうか。

「はーい、みんなが揃ったところでお話がありまーす」

この空気の読んでない声、わざとなのか、わざとじゃないのか。
どちらにしても、最悪だな。

「この新入生、蜜柑ちゃんについてですが、彼女はまだこの学園に入ったばかりで右も左もわかりません。
そこで彼女にここでの生活を指導する係=【パートナー】を選びたいと思いますv」


……げ。
最悪だ。
ただでさえ、めんどくさい生活になってんのに、これ以上ややこしい状態になるのは流石に勘弁してほしい。
……何でこんな変な制度ばっかあるんだよ。
もうほっといてくれないかなー。


「選ばれた人は、彼女と始終行動を共にして、手とり足とり教えてあげて下さいv
では、こっちで勝手に決めたので、発表しまーすv」


最悪最悪最悪。
始終行動が一緒?
それも、すでに勝手に決めた?

もうこうなったら、出来るだけ干渉してこない奴であることを祈ろう。






「蜜柑ちゃんのパートナーは、――――――日向棗君ですv」



(……は!?!?)



あまりのことに固まる。


ありえない。
暁のときはともかく、佐倉蜜柑のときは完璧にあいつは私を嫌ってる。

学校生活だけでも、楽しもうと思ってたのに、何してくれてんだ!!
周りも、ものすごいブーイングの嵐。(主に棗のファンと取り巻き)




「じゃ、そういう事でよろしくねv」

語尾にハートをつけて、いい逃げか!!
ふざけんなよ。






(何考えてんだ、鳴海ーーーーーーっ!!!)
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