□No.08
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1人減り、2人減り、3人減り……



委員長たちの犠牲によって、私と蛍は病院の窓下まで着た。



『蜜柑、アンタは東棟へ。
あたしは西棟で二手に分かれて行動するのよ』



そういって蜜柑と蛍は分かれた。
そして私は今、堂々と東棟の廊下を歩いている。
怪しまれるなんてことはまったくない。
私の診察場所である特別棟は、東棟の一番奥から行けるからだ。


関係者でも一部の人間しか知らないところへ、蜜柑は入っていき、
簡易な診察を受け、薬を受け取るとすぐに診察室から出てきた。


診察といっても何かしてもらえるわけじゃない。
してもらえるのは、現在の身体の状態の確認ぐらいだ。
文句を言うつもりなんてない。
アリスの影響で縮まっていく命をどーにかするなんて出来ることのほうがありえない。


身体のだるさと、さきほど飲んだ薬の副作用である眠気と闘いながら、特別棟を出て東棟の廊下を歩く。

そして、ふと足を止めた。


確か、日向棗の病室は東棟だったはず。
少し、心配だったし、見に行って見るか、そう思い立って再び歩き出す。

部屋の近くまで行くと、ちょうどパーマと乃木流架が部屋から出てくるところだった。
鉢合わせるといろいろ都合が悪いので、壁の陰に隠れる。





(……行った…?)


2人が行ったことを確認してから、部屋に向かって歩いていく。
隔離されているせいか、さっきまで居た2人以外、誰1人見当たらない。


ドアノブにそっと手を掛けようとしたそのときだった。




「!?……誰、」


人の気配を感じ、ゆっくりと振り向きながら問う。



「ふーん、お前みたいなガキに振り向きもせず気づかれるとはね」

そういって、嫌な笑みを浮かべる顔には見覚えがあった。
誰かの雑誌やCDのジャケットに映っていた顔。

「お前、レオか。
……ただの子どもの病室にお前みたいな大スターが何の用?」

蜜柑はしゃべりかけながら、ばれないように壁、扉、あとその隙間を水で埋めつくし、
中に居る日向棗に聞こえないようにする。


「ただの子ども、ね。
ただの、じゃないことぐらいわかって言ってんだよな?
その病室に居る【黒ネコ】だけに用があったんだけど……


お前も見られたからには逃がすわけにも行かないな」


その言葉を合図に、周りにいた黒服の奴らが襲い掛かってきた。
なめていたからなのか、本気で動いてもそうなのか知らないけど、
そいつらの動きはあまりにも遅く、避けるのはあまりにも容易かった。

避けた瞬間、1人の男に回し蹴りを食らわす。
けれどその程度で子どもが大の男を倒せるはずもないので、
ふらついた一瞬の隙に相手の懐に入り、下から顎を一気に蹴り上げた。



「……お前、何者だ」



倒された男は、まったく身動ぎせず、完璧にのびている。


「……別に、ただの学園の生徒だよ」


さっきの一連の動きを見たことによって、黒スーツの男達の目付きが変わる。
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