□No.08
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それから、少しの時間だったけど、いろんな話をして。
あのときは、久し振りに穏やかにちゃんと笑えた気がした。
(……妹、か)
大方、毎晩夜通し探しているのだろう、そう考えて蜜柑は1人嘆息する。
私も手伝うといったわりには、何も出来ていない。
蜜柑は自分の無力さを感じて、みんなにはわからないよう顔を少しだけ顰めた。
「ねえ流架君、こんな人たちにかまってないで行きましょ」
「行くってどこに」
「病院よ。
実はあたしと流架君の2人、棗君の友人代表で特別に病院へのお見舞いを許可されてるの」
(お前、友達扱いされてねーじゃん…)
友人代表とかよく言えたもんだ、と蜜柑は呆れる。
てかどーせ私も今日は検診だから、病院行けるし。
そして乃木流架とパーマが去っていったあと、後ろでは抗議の声が。
理由は病院=生レオ。
「きっと汚い手使ったに違いないよ、クルクルパーマのことだから」
現在、心読み君とキツネ目君を筆頭にパーマの愚痴大会を開催中。
そうやってみんながグレている中、蛍は我関せずといった感じで何かを一心不乱に製作中。
だから、私はてっきりもう興味が失せたか、あきらめたと思っていたんだけれど。
自分の考えが甘かったことに、この後すぐ思い知らされることとなる。
「人海戦術作戦よ」
――何だ、この状況は。
蜜柑は弱冠、眩暈を起こしそうになる。
私は今、みんなと一緒に蛍の発明メカと作戦について説明を受けている。
作戦名は【生レオに会いに行くぞ!数打っちゃ当たる】作戦。
(どんだけ生レオ見たいんだよ!)
……恐るべし、ミーハー魂。
1人蜜柑は心の中でつっこんでいた。
私に渡されたのは、【通信用イヤーマフラー】と【録音指輪】。
やっぱり蛍はすごいなあ、とこんな状況でも惚れ直す。
どーせ病院行く予定だったし、ある意味では今行ったほうがいろいろばれにくいかもしれない、
無理矢理そう自分を納得させる。
それにみんな楽しそうだしこんなときに水を差すのもどーかと思う。
友達と馬鹿みたいな悪ふざけがどれだけ楽しいかなんて知ってるし、とその様子を見つめながら微笑んだ。
(……大丈夫、だよな…?)
きっと大丈夫。
きっと何も起こらない。
そう自分に言い聞かせて、蜜柑はみんなと一緒に教室を後にした。