たんぺん

□この恋が恋であるうちに、
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はじめに好きだなあって思ったのは失いかけたときだった。

お父さんと行ってしまったと聞かされたとき、確かに銀さんに苛立ちも感じたけどその場にいなかった自分にも苛立った。必死に追いかけて追いかけて。ああ、好きなんだって。

だから今まで後悔しないように、壊さないように、大切に扱ってきた。

そして気づいたら僕は、お兄ちゃんのようなお母さんのような立場になってしまっていた。嫌じゃない。だって、普通に想っても僕の想いが報われるわけがないから。

僕は眼鏡で弱い方で顔も普通で性格も…。だけど彼女の周りには僕より格好良くて、僕より強くて、僕といるより楽しい人たちがたくさんいる。地味な僕が叶うわけがない。だから、お兄ちゃんでもお母さんでもいい。恋人になんかなれなくていい。一緒にいたいんだ。

だから、


「大丈夫だよ。神楽ちゃんは可愛いよ」

「…本当にそう思うアルか?」

「うん。もちろんだよ」

キミの小さな恋いも、僕は応援するよ。

「だから、謝っておいで。きっと、大っ嫌いって言われたの気にしてるよ」

「…うん!行ってくるアル!」

「行ってらっしゃい」



大丈夫、辛くない。僕の役目だから。
僕しかできないことだから。



この恋が恋であるうちに、




銀さんがバカだなあって呟いた。でももう今更、僕がどうこうできるわけないでしょう?







2009.10.31
椚田 星羅

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