たんぺん
□発熱らんでぶー
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神楽ちゃんが風邪を引いた。銀さんから聞かされた時はまさかと思いエイプリルフールは4月ですよと言ってみたが、和室で息を荒くして彼女は寝ているのだ。あの破壊神が風邪を引くなんて。
「おかゆ、作ったけど食べられる?」
「…いらないネ」
…しかもかなりの重症だ。彼女の口からいらないなんて聞ける日が来るなんて思いもしなかった。こんな日に限って仕事で銀さんはいないし、姉上も九兵衛さんと遊びに行ってしまったし…。なんてタイミングが悪いんだ。
前、銀さんが風邪を引いた時格好いいと言っていた冷えピタもマスクもおかゆも試してみたが全部いらないと一言。食べて汗かかないと熱は下がらないし、おかゆだけでも食べて貰いたいんだけどなぁ…。
「ね、一口だけでも食べてみない?」
「…お腹空かないアル」
「でも、食べないと治らないよ?」
「うるさいネコンタクト!いらないアル!」
「メガネだ!…じゃ、なくて。」
「いらないったらいらないネ!わかったらそこで…?」
勢いよく起き上がった神楽ちゃんは僕に暴言を吐きながらふにゃりと倒れた
「だ、大丈夫?」
僕に抱きつく形で。
「うぅ゙ー…。気持ち悪いアル…」
「吐く?洗面所行く?」
神楽の僕の着物をつかむ力が強くなった。…吐きそうなのかな。どうしよう。ここで吐かれたら僕の着物はともかく、布団までべちゃべちゃになっちゃうなあ…。
「…吐かない、アル。」
「本当?むりしなくていいんだよ?」
「大丈夫ヨ。ちょっとクラッときただけアル」
まだ辛そうだけど少し落ち着いたのかまた布団に潜った。僕の着物は掴んだまま。
「神楽ちゃん?」
「新八も寝るヨロシ。新八に移すアル」
……すごいことを言われたような気がする。なんだこれ。どういう意味だこれ。
「え、えーっと、神楽ちゃん…?」
「早くしろヨ。駄眼鏡が」
…うん。多分、深い意味はないんだな。ただ単に僕に風邪を移したいだけなんだな。
…べ、別にいやらしことなんてこれっぽーっちも考えてないから!
「…ふぅ。」
「新八に…」
「ん?」
「新八に移ったら今度は私が看病してらるヨ」
そう言った神楽ちゃんの耳が真っ赤だったのはきっと、風邪のせいだけじゃないと思う。
発熱らんでぶー
仕事帰りの銀さんが一緒に寝る僕らをみて大騒ぎしたのは言うまでもない。
2009.10.31
椚田星羅