▽拍手log

□待ち望むひとつ
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「水嶋先輩!これ受け取って下さい!」

「これも!」

「郁ー、はいコレあげるー」



チョコレート会社の策略にまんまと嵌まった女の子達が、朝から両手に抱えきれない程のチョコレートを僕に渡して来る。
それを笑顔で、それもお礼付きで受け取っていれば、いつの間にかチョコの数は溜息が出るくらい多くなっていて、一日の講義が終わった後でそれを全部友達にあげた。

身の軽くなった僕はケータイを開くけれど、焦がれる相手からのメールも着信も無くて少し不機嫌になる。



「はぁ…仕方ない、」



少しばかりの遠距離恋愛は、会いたい時になかなか会えない。

僕は帰ろうと鞄を掴んで門へ向かった。



「い、郁!」



不意に前方から僕を呼ぶ声に顔を上げる。
聞き慣れた、愛しい声だ。

そして大学の門前に、見慣れた姿を見付けて駆け寄る。



「どうしたの?来るなら連絡くらい…」

「だって、早く渡したかったから」



恥ずかしそうに真っ赤な顔で、僕を窺う様に上目使いで、そんな彼女が可愛くて思わず笑った。

ふと、鞄だけしか持っていない僕に、彼女は首を傾げる。



「郁、チョコ貰ったんじゃないの?」

「ん?あぁ、全部あげちゃった」

「え!?」



目を見開いて驚く彼女に、僕は此処が大学だとかそんな事は気にせず抱き寄せた。



「だって、僕にはこれで十分じゃない?」



君がくれる甘い愛

(君からのその愛情は)
(義理だろうと誰にもあげない)



END

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