▽StarDust
□生きる、という事
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眩しい光と心地良い温かさ、部屋の中に充満する良い匂い、トントンと響く軽快なリズムに目が覚めた。
あれ、ベッドで寝てた筈なんだけど…。
今オレが横になってるのはソファーだ。
「……っ、」
あぁどうしよう、寝れたから少しは良くなったかと思ったけどどうやらオレの考えは甘かったらしい。
起き上がったら、グラリと世界が歪んで再び倒れそうになった身体を腕で必死に支えた。
これは、酷くなってるな…。
頭痛がする…というか、頭の中に響くコレは声とか叫びに近いかもしれない。
全ての存在を否定し続ける自分の声。
治まるはずも無いけれど、気休めに片手で額を覆った。
ふと音が止んで気配が近付く。
顔をあげると、目の前にしゃがんだ先生の端正な顔が、直ぐ傍にあった。
あぁ、いつ見ても綺麗だな…なんてぼんやり考える。
先生はただ黙ってオレの頭をやんわりと撫でた。
その感触が心地良くて目を細める。
痛みが少し引いた気がした。
「大丈夫だ、お前には俺が居る」
その声にハッとして目を開いた。
柔らかく笑う目の前のこの人に、涙が溢れる。
生きたいと葛藤する自分と、死んだって構わないと自虐する自分が居て、普段から小さな所で暴れ回る二つの思いが心も頭もグチャグチャにして、限界が来た時にオレを支配するのは“無”…。
生きたい理由も死にたい理由も曖昧でどうしようもない。
だから、何もしない。
放っておけば食欲も眠気も襲って来るかもしれない、来なければそのまま死ぬだけだ……そう、それだけ。
でもそれは、少し前までの話しだった筈だ。
今のオレには生きる理由、生きたい理由が在ったのに…。
「こ、たろ…っ」
「ん?」
生きる理由をくれた…ここに居ても良いんだと感じさせてくれた、教えてくれた。
そんな貴方が居たのに、どうでもいいなんて自分を投げたオレが許せない。
こんな弱くて愚かなオレを、必要だって言ってくれたのに…。
「ごめ、なさ…っ」
謝るオレに、手が止まる。
「…めんなさ…っ、ごめんなさい…っ、ぅぁっ」
腕を引かれたかと思えば、腕の中。
温かくて、余計に涙が出た。
「謝るな…お前は何も悪くない」
「っ、う…」
先生は、オレが泣き止んで落ち着くまで、ずっと抱き締めて居てくれた。
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