秘密の花園
□二つ月夜
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関ヶ原の陰陽。
陽の徳川(東軍)と陰の石田(西軍)。
太陽に隠れて出て来ない月。悪者扱いされる月。
けれど、私は月の方が好きだ。
「家康・・・っ!」
「・・・・・・三成・・・」
秀吉様達が殺されてから三成はずっと悪意を込めて徳川の名を口にしていた。
「三成。お気持ちは解ります。ですが・・・」
「貴様に私の何が解る!」
「!」
「・・・・・・」
「あ、三成。何方へ・・・」
「貴様に関係無い」
そうとだけ言って、三成は何処かへ行ってしまった。
「・・・」
関係無い。そう言い放たれてしまった。それは「興味が無い」と言われるのと同じ事。
でも、・・・。それでも私は―・・・
「三成!」
「・・・・・・」
「戦場に行かれるのでしょう?私もお供します!」
「・・・来るな」
「いえ。私も共に参ります。・・・私は・・・三成の『月』ですから!」
「!」
「三成は私の月。私の夜道を照らしてくれる。けど私は、三成を照らす月。足元は暗いでしょう?私の光りで照らしてみせます」
三成の表情が少し和らいだ。
それからまた歩き出したけど・・・、もう「来るな」とは言わなかった。
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