マリオネット〜操り人形の恋〜
□第1話『聖マリネ学園』
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-数年前-
「お前、孤児なんだってな。何でそんな奴が此処に居るんだよ?」
「………」
あ。と、思った時はもう遅かった。頬に痛みを感じる。殴られたのだ。石が転がる地面に手を着く。
「ほら、孤児なら孤児らしく、物乞いでもしてみろよ」
俗に言うイジメっ子集団。
この年頃の子供達にとって、両親が居ないという事は、異常の一つだった。
こんな年端の行かない子供達が、『孤児』の意味を知る筈も無い。
只、イジメた。親に「あの子に近付いてはいけません」とでも言われて。
そして、少女には、子供達にとって異常だった事が有る。
頬の傷だった。
その傷は、十字架に見えた。それが気持ち悪い。
そんな少女を助けてくれる人は居ない。この少女なら、いくら苛めても誰にも咎められない。この少女なら、殺したって……。
「ほら!早く物乞いしてみろよ!生ゴミくらいなら、恵んでやるぞ!」
ははは。と、自分よりも身分の低い人間を見下して笑う。子供と言うのは単純で残酷だ。
しかし、その笑い声が、第3者に場所を教えてしまった。
「かりん!」
歳上の少女が来た。
「貴様等!妹に何をする!」
罵声で子供達を蹴散らす。
「………お姉ちゃん……」
「大丈夫か!?かりん」
駆け寄って抱き起こす。
「おまえたち、いけませんよ。どんなりゆうにせよ、おんなのこをいじめるのは」
女の子限定で無い気もするが、イジメっ子達には、優しいながらも子供を叱る中性的な少年の声。
「……お姉ちゃん…」
消え入りそうなか細い声。
「さぁ、かりんもみつけたことですし、かえりましょう。かすが」
「はい」
少女を負ぶる少年。
そんな少年に寄り添う様にしながら、少女は妹のランドセルを持ち、2人で並んで歩いた。
あれから数年。
色々と有ったけど、私は高校に入学する事が出来た。お姉ちゃんと、その幼馴染みが通う不思議な高校に。
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