季節小説

□修学旅行
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これは昌浩が中学生の時のお話。



時は平成…。



稀代の大陰陽師安倍晴明宅のリビングでは十二神将最凶にして最強の火将騰蛇が本日何度目かの溜息をついていた。


「はあーっ」


本を読んでいてもテレビを見ていても心此処にあらずといった様子で何やらソワソワしている。


広いリビングには他にも勾陣、天一、朱雀、白虎六合がそれぞれ寛いでいたのだか同胞の様子を見て皆必死で笑いを堪えていた。


「少しは落ち着け騰蛇」

「勾…お…何の事だ?俺は落ち着いているぞ」


同胞の指摘に慌てて新聞を読み出す騰蛇。


「騰蛇」

「な…何だ六合」

「新聞が逆さまだが」


バサバサバサ……。
騰蛇は取り落とした新聞を慌てて拾う。


「どこか身体の具合でも悪いのですか?騰蛇?」


天一が優しく騰蛇の額に触れようとするのを朱雀が阻んだ。


「天貴が心配する事はない。騰蛇はただのヘタレ病だ」

「ヘタレ病?」


首を傾げて恋人を見る天一。


「昌浩が修学旅行で今日から2〜3日帰らないので騰蛇は昌浩が心配で仕方ないんだ」


その場にいた全員が頷いた。


「私はてっきり物の怪姿で昌浩について行くと思っていたぞ」


勾陣が騰蛇をからかうように笑った。


「ま…まままさか。昌浩もそろそろ自立心を養わないとな」


それじゃ俺もう寝るからと両手両足を同時に出してギギギという擬音付きで騰蛇はリビングを出て行った。


『ぷっ…』


後に残った全員が吹き出したのは言うまでもない。


「寝るって、まだ7時ですよ」

「大分無理をしているな騰蛇の奴」

「昌浩が生まれてから3日も離れた事などないからな」

「昌浩様もお心寂しくお過しですわねえ」

「天貴は本当に優しいなあ。大丈夫、昌浩なら友達と楽しくやってるさ」


朱雀が天一の肩を優しく抱いた。


「ところで昌浩の修学旅行先って何処なんだ?」

「確か奈良と京都とか」

「ほぅ−京都もか」

「それは昌浩も懐かしいだろう」


昔ほど妖もいなくなったが神将達は晴明や昌浩と駆け回った平安の昔の思い出話に花を咲かせた。

 
 
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