季節小説

□入学式
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4月…。


今日は昌浩の高等部の入学式。



「あの小さかった昌浩が高校生か〜」

「あのお小さかった昌浩様が」

「あの小さかった昌浩が高等部のブレザーもよく似合って」

「あの小さ…」


「もう皆して小さい言うな」


この場合意味は全く違うのだが同年代の少年達の中でも昌浩は小柄な方なので本人はいたく気にしていた。


「孫」同様「小さい」は禁句である(笑)


「昌浩、式が始まるぞ」

「うん紅蓮、てか朱雀、天一、太裳、勾陣、六合。みんな何で来るわけ〜?」


昌浩は人型になって学校に集まる神将達に呻いた。


「父兄は何人行っても良いだろ?」

「お仕事で来れない晴明様が私達で代わりに見届けるようと」

「やはりお仕事で外国に行っていらっしゃるご両親にもご報告しませんと」

「お前の兄ちゃんズにもビデオを頼まれたしな」

「俺はデジカメ担当だ」


思えば幼稚園の頃から学校行事といえば神将達が入れ代わりのように来ていた。


祖父や両親や歳の離れた兄達が多忙で来れない事の穴埋めをしてくれているかのように。


「でも今はたんに面白がっているだけのような気がするんだけど」


「そう言うな。皆お前の成長が楽しみなんだから」

不満そうな昌浩の頭をなでながら騰蛇は愛しそうに目を細めた。



入学式会場の体育館に入ってすぐ昌浩は見知った気配に肩をたたかれた。


「よっ!昌浩、高等部でも同じクラスだな」

「あっ比古、また席も隣だと良いね」


出席簿順だと昌浩の苗字は安倍。比古は九流で近い。縦並びだと隣になる可能性は高いのだ。


「そうなったら他の野郎共にまた妬まれるな」


比古は肩を竦めて苦笑した。


「比古?」


親友の言っている意味がわからず昌浩は首を傾げて比古を見た。


「またそんなプリティな様で俺を見るなよ。俺はまだ長生きしたい」


実は昌浩は本人は知らないが中等部のアイドルでかなり人気があった。
可愛いし優しいし面倒見も良いし頭も悪くない。
ちょっと(?)天然なところもポイント高い。


男子校で華が無いのでわからないでもないが、そんなわけで昌浩といつも一緒にいる比古はみんなの羨望の的なのだ。


「何わけのわからない事言ってるのさ」


当の昌浩は全く気がつかない。


「ところで今日は入学式だけだから終わったら近くの公園で花見を兼ねてお昼食べるんだ。比古もおいでよ」


「え?良いのか?やった−!お前の式神の弁当って美味しいからな」


自分に注がれる周りの突き刺すような視線を無視する事にして比古は昌浩と肩を組んで自分達のクラスの席に向かった。

 
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