季節小説
□ホワイトデー
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風に暖かさを感じる弥生…3月。
「なあ朱雀ちょっと相談があるんだが」
十二神将最強の男は深刻な面持ちで同胞に尋ねた。
「なんだ?」
朱雀は鏡を見て明日の為にタキシード姿の自分を入念にチェックしながら騰蛇に気のない返事を向けた。
「お前、明日のホワイトデーは天一に何をやるんだ?」
「あ…」
「愛とか言ったら殴るぞ」
「なんだ?余裕ないなあ。昌浩ならお前からなら何でも喜んでくれるだろうが」
「そ…それはそうだが、毎年食事に行くくらいで…今年は少し違ったものを…と」
「あ〜それわかるぜ。因みに俺は天貴が人型になった時のドレスとコートと靴。それを着てもらって映画かな。本当に毎年あまり代わり映えしなくて反省しているんだが天貴が喜んでくれるし…」
「す…すごいな…」
「何言ってる、六合なんて風音が明日東京に来るっていうからア○マーニのリストランテとTホテルのスイートを予約してたぜ」
「ア…なに…?」
目を白黒させて会話に着いていけない騰蛇に朱雀は心底呆れた。
「おいおい、俺達の中で一番人界にいる時間が長い奴が勉強不足だな」
「ままま昌浩はまだ子供だから流行とか高価なプレゼントとかは無用だ」
騰蛇は昌浩が自分で働いてお金を稼げるようになるまで分不相応な物を買いあたえないようにしている。
もちろん買ってやると言っても昌浩自身がいらないと言うだろうが。
「そりゃわかるが一年に一度くらい日常を忘れて恋人として思い出の一つくらい作ってやっても良いんじゃないか?」
そうは言われても騰蛇としては今更どうして良いかわからない。
お…俺はやはり詰めが甘いのか。
昌浩の恋人として夫として失格だ。
うなだれるヘタレ神将の背後に六合が顕現した。
「騰蛇、晴明が呼んでいる」
「あ〜?」
何だ人が落ち込みMAXの時に。
騰蛇はどんより不景気な顔をして晴明の部屋に向かった。