リク小説
□トゥモロー
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「紅蓮ただいま〜」
少し長めの髪を一つに括った少年は途中まで迎えに来た紅色の髪の青年に元気に飛び付いた。
「こ…こら昌浩、もう子供じゃないんだから」
青年は少年を抱き留めながらも少し顔を赤らめ周囲の通行人の視線を気にする。
昌浩はこの春で中学生2年生になった。
まだ幼さの残る童顔は少年というより少女のように愛らしい。
「え〜昨日もお前はまだまだ子供だって言ってたくせに何さそれ」
昌浩は不満そうに口を尖らせた。
最近謄蛇は自分とスキンシップをとる事を避けているように思える。
少し態度もよそよそしい。
そのくせ今日みたいに帰りが遅くなっただけで心配して迎えにくるのだから嫌われているわけではないと思うのだけど。
昌浩はそんな謄蛇の様子が寂しくて仕方なかった。
仕事で外国にいる事の多い両親にかわって幼い時から昌浩の面倒を見てくれていたのは祖父の配下の十二神将達。
だが謄蛇だけは晴明のではなく昌浩の式神である。
現世で謄蛇は昌浩がいつどこで生まれ変わってもすぐに駆け付けられるようにと晴明の式には降らなかった。
晴明の朋友である事に変わりはないが今の立場は他の十二神将とは違う。
つまり昌浩に何をしても主の晴明に文句を言われる事もシバかれる事もない。
いや祖父としては別だが。
実は謄蛇の悩みもこの中途半端な自由さにあった。
「紅蓮俺達夫婦なんだから何か悩みがあるなら相談して」
「昌浩…」
前世の記憶をしっかり持って生まれ変わった昌浩は謄蛇と恋人で夫婦だった事も当然覚えていた。
幼児の頃から
「れんはおれのこいびと〜」
などと辺り構わず喋ってまわるものだからいつか児童相談所からチェックが入るのではと心配したものだ。
だが……。
「紅蓮…?」
「昌浩…俺は」
華奢な身体を抱きしめ口づけすれば腕の中の少年が僅かに怯えるのがわかる。
長い口づけの後の吐息、潤んだ瞳、赤く染まった頬。
謄蛇としては口づけ以上の行為におよびたいのだがまだ早いとなけなしの理性を総動員する。
当然だが夫婦になってたらどんな事をするかまでは…さすがに昌浩も記憶にないのである。
謄蛇としては昌浩を恐がらせて嫌われたくない。