季節小説
□七夕
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少しして昌浩が晴明のもとにやって来た。
「じい様、紅蓮の様子が変なのですがこちらに来ませんでしたか?」
「吉昌の部屋におるよ。暫く放っておいてやりなさい」
「え?父上の部屋に?」
キョトンと首を傾げる昌浩。
「ふふっ、何やら願い事が沢山あり過ぎて一人で考えたいらしいぞ」
「え?願い事?沢山?」
その一つとして昌浩は騰蛇から聞いた事がなかった。
「紅蓮、そんなに沢山何のお願いがあるのかな」
自分に何も言ってくれなかった騰蛇に少しショックを受けた昌浩は拗ねたように呟いた。
「何じゃ昌浩、知らんのか?」
「じい様はご存知なんですか?」
呆れたように言う晴明にムッとして昌浩は聞き返す。
「知らんよ。だがわかるがの」
修業が足らんのとキョホキョホ笑う晴明。
「修業じゃなくて晴明の場合年の功だろう」
勾陣が昌浩と晴明の前に顕現した。
「また身も蓋も無い事を言うでないわ」
「本当の事だろう。そうやって昌浩を不安にさせてからかうと後で騰蛇が怖いぞ」
「勾陣にもわかるの?」
昌浩は目を見張る。
「ああ勿論、単純な騰蛇の考える事など丸わかりだ」
昌浩は絶句した。
ちなみに昌浩が短冊に書いた願い事は『紅蓮とずっと一緒にいられますように』だ。
色々考えはしたが一番の願いとなると他には思いつかなかった。
昌浩は騰蛇も同じだったら嬉しいと思っていたが彼には他にも沢山の願いがあったのだ。
「見てみたいか?」
肩を落として俯く昌浩の肩に勾陣が手をおいた。