短編小説
□手ぇ出せねぇ
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手を出すのは簡単。
何せこの無防備さ。無垢さ。
今だったら口を付けることだって容易い。
でも…何かが邪魔をする。
神楽はもぞっと動き,第一声を発した。
「ぎ……んちゃ…」
「………ん〜?」
「肉まん食べたいアル」
銀時は頬を緩め,目を擦る神楽の隣に潜り込んだ。
「てめーで買いに行け。…あ………やっぱ一緒についてこい。それなら行ってやる」
「ヒヒ…怖いアルな〜。一人で行くのが。」
「あーそうだよ。銀さん昨日ホラー映画見ちゃったから」
「しょうがないアルネ。酢昆布買ってヨ」
「あー」
神楽は目を細めて笑った。
花のように。
この笑顔を壊したくない
この笑顔が見たいから
「手ぇだせねぇんだよな…」
「ウン。寒いからネ。出す気にならないアル」
銀時はそんなあどけない神楽の顔を見て微笑んだ。
「(あーあ…いつになったらこの気持ちは報われるのかねぇ。)」
今はこれが幸せのカタチ。
ま…このままでいられるワケねぇんだろーけど。
いつか…………な。
おわり