Novel 1
□煙で満ちる
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煙草を吸わず1週間が過ぎ去った
正直、2日目で諦めてしまおうかと思ったがファインの顔が思い浮かび断念した
ニコチンを吸わなくなってぼんやりする頭で机の上に置いてあったコーヒーのカップを肘で倒してしまい見事に煙草の箱にかかってしまい、もったいないと思いながら黒く濡れた箱をゴミ箱に投げ入れる
いくら軽いのを吸っていたとはいえ、ここまで煙草に依存してるなんて自分でも気づいてなかった
窓を開けるとかならず隣から匂ってくる煙草の匂い、窓を開けるたびに匂ってくるこの匂いはどうにも俺への当てつけにしか思えず、ついに我慢の限界で強く隣の家のインターホンを鳴らす
インターホン越しにいつもの声がどうぞーと気楽な声で帰ってきたので鍵のかかってないドアを開けた
なかは窓を開けているというのに立ち込める煙の臭いにとても息苦しいと同時に、一週間我慢した匂いに心が落ち着く気がする
「どうしたの?禁煙やめる気になった?」
机に突っ伏したファインの手には真新しい煙草の箱が山積みにされていて、その近くにありえないくらいの煙草と灰が入った灰皿がなげ捨てられていた
ここまで、ファインが煙草に依存していたとは思っていなかった
「いい加減そんな重いやつ吸い続けたら病気になるぞ」
「う〜ん、まあ・・・大丈夫なんじゃないのかな」
えへへ〜とまるで幼児のような顔に一瞬、妹の顔が頭に浮かび今度帰った時はお土産どうしようかなんて馬鹿げたことが考えた
俺の様子に首をかしげたファインになんでもないと返すとそう・・・とぼんやりした声で答えられる
「煙草、いる?」
一週間前のように差し出された煙草はとても魅惑的なものに見えた
だがここで吸ってしまったら一週間の努力はすべて無駄に消えてしまうわけになる
いや、いらないというとまるで一週間前のように笑って、灰皿に火のついたままの煙草を置き立ち上がった