Novel 1
□ブラックstory
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「怪我したと、聞いたが大丈夫か…」
男子コートからわざわざ走ってきてくれるシェイドになんだか涙が出そうだった
痛いの言葉を噛みしめて、大丈夫だよって笑う
呼吸が落ち着いたシェイドは、いつもとは違う目であたしを見ていた
いつもこの目をしたシェイドはあたしの嘘を見破ちゃう
「ファイン、俺も一緒に行くから保健室に行こう」
ほら、また見破られた
まるであたしが駄目っていちゃいけないみたいにシェイドは手を伸ばす
恥ずかしかったけどシェイドの手を握り返す
あたしと違う手にドキドキしてなんだかとっても幸せだった
シェイドに手を手を引かれながらコートから出る
また空の大きな雲が目に入った
さっきとは違う形をしてるけど、多分あたしはこの雲を見てたんだ
雲に魅入られていると、頭の中に言葉が過ぎる
太陽のお姫様の光で月の王子様の体は弱っていき
月の王子様の光で太陽のお姫様の体は弱くなっていきました
体に冷たい何かが通った
頭の中が真っ白になり、体が震える
「シェイド!!」
大きな声が出た
自分でもびっくりするくらいの大きな声
シェイドもレインもみんな、あたしを見て目を大きく開いてた
「あのさ…!一人で大丈夫だから…」
握り締められてる手を離して、シェイドの横をすり抜ける
シェイドがどんな顔してるかなんて見る勇気なんかなくて下をうつむいて歩く
あたし、最低だ…
今さら、自分の言った言葉に目の奥がじんわりと熱くなってきて、目をこすってごまかした
後ろから名前を呼ばれた気がしたので走ってシェイドの前から逃げだした