Novel 1

□拍手
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「あっちゃー!!雨降ってきちゃったー!!傘持ってきてないのに〜!!

 どうしよ、レインもいないのに〜!!」



靴箱でファインが額を抑えながら、叫ぶ。

今日は、ファインが居残りでレインには先に帰ってもらったのだった。



「どうしよう。なかなか止みそうじゃないし・・・濡れて帰ろうかな・・・」



「あれ?ファインかい?どうしたんだ?こんなところで」



後ろを振り向くと、そこには学園の副生徒会長のトーマがいた。

ファインを見て、不思議そうに微笑んでいる。



「トーマさん!!いやぁ、それが・・・傘忘れちゃって・・・」



ファインが照れたように笑う。



「そうだ!ファイン。こっちにおいで。」



ファインの手を取り、トーマがファインを引っ張る。

ふわぁ、と小さな声でファインが驚いたような声を出す。



ファインの手を引いて、トーマは校舎の裏側に走る。

校舎の裏側に、ぼやけて青いものが映る。



「これって・・・?自転車?」



ファインが首をかしげながら、木に倒れかけている青い物に指を指した。



「ああ。この、自転車、最近ここに捨てられたらしくて、捨てるのももったいないから

 今日は、乗って帰ろうと思って。ちょうど雨も降ってるし・・・一緒に乗って帰らないかい?。」



優しく、トーマがファインに笑いかける。少しファインの顔が赤くなる。



「ええっ・・!!いいんですか?」



パァッとファインの顔が輝く。



「もちろんだよ。さぁ、乗って」



トーマが自転車の前に座り、ファインに手招きする。

ファインが後ろに座る。



「よ〜し!!じゃあ、行くよ!!」



トーマが自転車のペダルに足を乗せ、こぐ。

どんどん前に、自転車は進んでいった。



「うわ〜早〜い!!」



ファインが帽子を押さえながら、トーマの後ろから流れていく風景を見る。

ガタッ!!と、自転車が大きく揺れる。



「キャア!!」



ファインが揺れに驚いて、トーマにしがみつく。

トーマの体温が一気に上がり、耳まで赤くなる。



「だ・・・大丈夫かい?」



わずかに声が震えるなか、トーマがファインに声をかける。



「ふわ〜、ビックリした。トーマさん大丈夫だった?」



トーマに抱きつく力が強くなる。微妙にファインの目には涙が浮かんでいる。

抱きつく力が増すほど、トーマの顔が赤くなる。



そして、やっとファインがトーマの変化に気づく。



「トーマさん、顔かが赤い・・・あっ・・!!ご・・ごめんなさい・・!!!」



ファインが慌ててトーマに抱きついてた手を離す。



「あっ!!その・・離すと危ないから、離さないほうがいいよ!

 それと、離さないほうが僕的にも嬉しいから・・・」



今度はファインの顔が真っ赤に染まる。

トーマの腰に手を回して、背中に顔を当て俯いている。







あっという間に、寮についた。寮の前ではレインが傘を持ったレインがいた。



「ファイン!!よかった〜今から、学園に迎えに行こうと思ったのよ」



レインがファインたちに近寄る。トーマの自転車からファインが地面に降りる。



「じゃあ、僕はこれで。ばいばい二人とも。」



自転車を置きに行くつもりだろう、寮の反対側に走り去っていた。

ファインがレインに抱きつく。





「どどどど・・・どうしたのよファイン!!??」





あわあわとレインが上下に手を振る。そうとう、慌ているようだ。

レインがファインの顔を見ると、さらに慌てた。

ファインの顔が真っ赤になっていた。



「いったいどうしたのよ〜ファイン〜!!」



レインの声が、寮全体にこだました。





End
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