世界が終わるまできみがしあわせでありますように
□甘い毒に痺れる
1ページ/3ページ
暑苦しい観客達の声と無駄にマイクに叫び続けている髪の毛ギンギラの男。
ステージの上では気持ちいい観客の声援もいざ同じ地に立つと煩わしかった。
「ってかあのギンギラ男、何言ってんのか聞き取れねー」
売店で買ったサイダーが入った紙コップのストローに噛み付くと、
噛み付いたストローの入り口が潰れて見る影もなくなった。
だいたいなんで他のバンドなんか聞かなきゃいけねーんだよ
ぶつぶつと不満を漏らすと
机に肘をつき、目の前にいる男は涼しい顔してギンギラ男の歌といったら歌に対する侮辱としかいえない歌をぼんやりと見つめていた
「だって、ヴァンがスランプ気味って、いってたから。」
光の反射で男の眼鏡がわずかに光っていた。ギリギリと歯を噛みしめステージを視線を戻す
たしかに歌詞には詰まってたけど、別にこんな奴のライブなんて見に来る必要ねーだろ。
だいたいなんだよ。
なんでマイク捨てて転がりまわってんだよ、なんでベース弾いてる奴あんなに身体が反ってんだよ
「お前はさ、俺がこういうバンドしてる奴嫌いって知ってるだろ」
「知ってる、けど。でも、スランプは、よくない。」
思わず舌打ちし、空になったカップを自販機の隣にあったごみ箱の中に投げると、
見事にそれはゴミ箱の隣に落ちていった
もう一度舌打ちし、椅子から立ち上がりゴミ箱のところへと足を進める
俺のカップを拾い上げゴミ箱に叩きいれ、頭を掻いてもといた場所に戻ろうとした瞬間。
「うわった!!」
隣のドアが開き、思わず情けない声を出すくらい観客が流れ込んできた
ざっと見て、この会場にいるゴツい格好した観客達と違いまるでアイドルのコンサート観にいくようなチャラチャタした姿の奴らが大勢いた
人込みを掻き分けながら、もといた場所に戻り椅子に腰掛けるとため息が漏れる
「いったい次は何なんだよ」
「あれ。」
目の前の指を追い、ステージを見上げるとそこには高校生くらいの3人組がいた
そこで目立ったのが、小さな赤髪の女だった
「はぁ!あれがボーカル!?」
赤髪の女はマイクの調整しつつ、後ろの2人に笑いかけていた