Novel 1
□奇跡なんてなんと安易な言葉なのだろうか
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「あ・・・れ・・・?」
足はちゃんとある。手だってある。体は透けてなんかいない。
でも体が浮いていた
それにびっくりするぐらい体が軽い
おかしい・・・なんであたしは浮いてるの?
あたしはたしかに橋の上から落ちてそれから・・・・・
「ファインは・・・いつ帰ってくるのかしら」
目の前にいたレインがぽつりと口を開く
ずいぶんレインの声を聞くことが懐かしい気がする
「レイン?あたしはここにいるよ?」
レインはこっちを向いてはくれない
ただぶつぶつとあたしの名前を呼んでるだけ
なんだかそのレインはいつものレインじゃないみたい
壊れたラジオみたいにあたしの名前しかしゃべってくれない
「レイン?レイン!あたしは後ろに・・・!」
「レイン!!ファインはもう帰ってはこないのよ!」
目の前にいたアルテッサの声に遮られる
そして思い出した
暗い水の中の息苦しさ
必死で体は生きようとして手を動かすのに、まったく水面に出れずに溺れてしまった
ああ、そうかあたしは死んじゃったんだ・・・
怖いけど白の壁に向かって手を伸ばす。ぬるっと効果音がつきそうなほど簡単に壁をすり抜けた
すぐに腕を引き延ばし手を確認する
何も変わってはいない。ちゃんと肌の色も感触も。
「ファイン」