JUNJO***

□大てんてーの料理生活
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「・・・・・で?何だって?」

幼なじみである宇佐見秋彦から電話があり、数十分後。

『だから、手伝ってほしいんだ。』

「・・・・・なんで俺なんだ?」

『知り合いに料理ができる奴がお前ぐらいしかいないんだ。得意じゃないのは知ってるがな。』

「お前よりは、出来る自信がある。しかしまたなんで、料理なんかしたいと思ったんだ?宇佐見大てんてーなら、誰か雇うとか余裕で出来るんじゃねーの?」

『・・・作ってくれる奴がいるにはいるんだが。そいつを驚かせたいんだ。』


電話越しで弘樹は目を丸くした。

そこまで秋彦の興味を引く奴が近くにいるということが、意外だったからだ。

「・・・へぇ〜まさか、恋人、とか?」

『そうだな。恋人だ。』

「ふーん。俺の知ってる奴?」

『・・・多分、知らんことはないな。』


謎めいた発言に首を傾げていると、『孝浩じゃないぞ』と小さく付け加えられた。

(じゃあ、誰だ?まぁ誰でもいいか。秋彦にも恋人が出来たってことは・・・何も心配しなくて良いんだもんな。)


―――心配。
心配というのは、今一緒に生活している恋人、草間野分のことだった。

秋彦との関係を勘づかれていた上、秋彦を敵視しているので、弘樹が秋彦と会うことを良くは思っていないのだ。

しかし、秋彦に恋人ができたとなれば、少しはそんな疑惑も払拭出来るだろう。


『あまり時間は取らせないから、家に来てくれ。ついでにお前が欲しがってた本、見つけたから取りに来い。』

「マジかよ!?あれ、見つけたのか!・・・じゃあ行く」


あくまで。あくまで、自分は本を取りに行くのが目的なんだと言い聞かせ、別に料理を教えることだって下心がある訳ではないのだけれど、前者の方が正当な理由のような気がした。


もし野分に尋ねられたら、本を取りに行くだけだと云えば良いと決意し、弘樹は秋彦の家に向かった。



















―――ピンポーン。


「・・・・出ねぇ。何やってんだ?秋彦の奴。人を呼び出しておいて」


秋彦の家は、都内一等地の高級マンションの最上階にある。

何度も此処を訪れてはいるが、自分の住んでいる場所を考えるとさすがに少し圧倒される。


(ま、秋彦の実家と比べりゃ全然。うちもまぁまぁでかい方だしな)


『弘樹か?入れ』

「遅せぇよ秋彦。呼び出したくせに待たせやがって・・・・」


ガチャ、と扉が開いて出てきたのは、秋彦ではなく、背の小さい少年だった。

 
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