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□目覚める前に(完)
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ルルーシュが、皇帝のギアスで記憶を書き換えられ、半年の月日が経った。


僕はブリタニア最高の騎士、ナイト・オブ・ラウンズに昇格した。
ルルーシュという・・・否、ゼロという大犯罪者を逮捕した功績。


親友であり、敵であった、ブリタニアの元皇子。


彼はもう、此処にはいないのだ。

ゼロの記憶、ナナリーの記憶、皇子の記憶・・・彼は全てをなくした。


皮肉にも、多くの犠牲を出した、ギアスという能力によって。


記憶をなくしたルルーシュは、戦争に僕たちが引き裂かれる前の、無垢で、少し捻くれた少年になっていた。


優しくて、明るいルルーシュ。
僕はルルーシュが大好きだった。何より、愛していた。
友達より親友、親友より恋人、そんな関係になった。

素直に、嬉しかった。
ルルーシュと、こんな関係になれて。


――――――――君が、ゼロということに、薄々気が付いていたとしても。



どうしても、信じたかったから。



無実の罪で捕らえられた僕は、仮面の男に助けられた。

名を、ゼロ、という。

仲間になれ、と、彼は唐突に言った。僕がどうあがいても、そのやり方ではブリタニアは変えられない、とも言った。


勿論、僕は彼を否定した。
間違ったやり方で得た結果なんて、意味がない、と。

ゼロが生唾を飲んだ音が、やけに大きく聞こえた。


『・・・スザク』


小さく消え入りそうな声。闇に溶けていくような、そのまま流されてしまいそうな、そんなか細い声だった。



―――スザク。



思わず、足を止める。


枢木、と読んでいたゼロが、名を、呼んだ。

それは愛しい人の声に聞こえた。
低くて、少し寂しさが入り交じった声色。

いいや、違う。
そんな訳、ない。
彼は、こんなことしない。

ブリタニアを憎んでいるとはいえ、こんな・・・間違ったやり方はしない。
強引に、言い聞かせた。

しかし、冷静な自分が『ルルーシュならば、ブリタニアに反逆する動機が充分にある』と強く主張している。

声も体型も、ルルーシュに見えてくる。
愛しい彼が、自分を呼び止めている。

・・・錯覚、だ。


「―――ゼロ」

はっと、息を飲んだのが背中越しでも分かった。

「君は・・・」
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