企画部屋!

□む
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恋は盲目って、本当なのかもしれませんね。




「それでですね、ひどいんですよ…恭弥ったら…」


夜遅く、バーの片隅で。

二人の男女が並んでお酒を飲んでいた。

どうやら男のほうは軽く酔いが回っているらしい。

ぶつぶつと恋人に対しての文句や愚痴をもらし始めた。

そんな姿を見、女はそっと微笑んだ。


「聞いていますか、クローム?」


「はい、骸様」


「もう本当にわけが分かりませんよ…

 この間久しぶりに会ったら、いきなりトンファーで攻撃されて、
 
 挙句の果てに『君とはもう一生口をきかない』とか言い出すんですよ」



『もう本当にわけが分からないよ。

 この間久しぶりに会ったら――』



違う声が頭の中で重なり、女――クロームは思わず笑ってしまった。

頬杖をついていた男――骸は、怪訝そうな顔で彼女を見た。


「なんです、クローム?

 そんなに僕の苦労話は面白いですか?」


「いいえ。

 …ただ、似たようなことを他の人にも言われたので。」


「ほぅ?」


「その人は、久しぶりにあった恋人とけんかをしてしまって、

 後悔しているようでした。

 その人の恋人は、いつも自分の好みを配慮して、

 匂いがきつくない香水を身につけていました。

 …でも、その日の恋人からは明らかにいつもと違う香水の

 匂いがしていたそうです。」


「…それで?」


「だから、他の人のところに行ったのかと。

 他の人に、心を移してしまったのかと。

 そう思って不安になって…」


「……クローム。」


「はい。」


「お前の言う‘その人’はどんな人ですか」


クロームは優しく微笑むと、彼の望む答えを口にした。


「骸様の、一番大切な方です。」

 
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