パラレル

□華のようなひと
1ページ/1ページ




※雲雀の母親が花魁設定です

※骸が出てきません








母は強い人だった。




おなかの中に新しい命が

生きていると知ったとき、

普通の花魁なら堕胎するだろう。


花魁は子供を生めないのだから。


母はそうしなかった。


隠れて自分を生み、そして育ててくれた。



母はいつも言っていた。




「恭弥、強く生きなさい。」





自分を信じて、強く生きるのですよ。









「母様!!母様…!!」


「恭、弥…」


恭弥は自分の母を抱きしめた。

あんなに強く、綺麗だった母。


その母が死にかけているなんて。


母は苦しそうに息を吐き、

自分のおなかを手で押さえた。

恭弥は母の手からにじみ出る赤を見て、

母をこんな姿にした人間を呪った。


もう動けない母親を背負って、

恭弥は歩き出した。


――正確には背負ろうとした。


一人の大人を子供が背負えるわけがない。

たまらず、母親は声をかけた。


「恭弥…もういいのです、
 
 貴方だけは…母様は……」


母親の声を遮るように、恭弥は言った。




――――子供だとは思えない、
    意志の強い声で。



「…母様でしょう、強く生きろと、

 自分を信じて強く生きろといったのは」


「僕はあきらめない。

 僕は、母様と一緒に幸せに

 暮らしたいんだ」


後ろの母親から目をそらさずに

恭弥は言った。


そんな恭弥に母親は驚いた様だった。



そして、

華が綻ぶようにふわりと笑った。




以前のように豪華な着物やかんざしは

身に着けていなかったけれど、

それは今まで見た中で一番美しい

笑みだった。






恭弥、わたくしの可愛い息子。

どうか、わたくしのようにならず、

幸せになってくれますように――

               

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ