パラレル

□春うらら
1ページ/2ページ




※骸(15)×雲雀(6)





『どうか、この子を宜しくお願いします』

静かな、それでいて凛としたあの声を、

僕は一生忘れることは出来ないだろう。





心地よい春の日差しが降り注ぐ、丘の上の

桜の木にもたれながら、骸は本を読んでいた。

読んでいた本に影が差し、骸は顔を上げた。

つい、と差し出されたもの――

桜の枝をみて、

骸は嬉しそうに笑う。


「僕に、ですか?」


「うん。」


そう答えたのは、まだ幼い少年だった。


「…おやおや、

 桜の枝を折ったんですか?」


少年はしまった、という顔をして

桜の枝を自分の後ろに隠した。



「…違うよ。

 ほら、あそこの雀が折っていったんだよ。」


「…雀にそんな力はないと思いますが…」


気まずそうにうつむく少年。

そんな少年に骸は苦笑した。


「僕はうそつきは嫌いです。」


「…うん。」


「でも、君は僕が桜が好きだから、
 
 わざわざ僕にくれたんですよね。」


少年は静かに頷いた。

         
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ