パラレル
□春うらら
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※骸(15)×雲雀(6)
『どうか、この子を宜しくお願いします』
静かな、それでいて凛としたあの声を、
僕は一生忘れることは出来ないだろう。
心地よい春の日差しが降り注ぐ、丘の上の
桜の木にもたれながら、骸は本を読んでいた。
読んでいた本に影が差し、骸は顔を上げた。
つい、と差し出されたもの――
桜の枝をみて、
骸は嬉しそうに笑う。
「僕に、ですか?」
「うん。」
そう答えたのは、まだ幼い少年だった。
「…おやおや、
桜の枝を折ったんですか?」
少年はしまった、という顔をして
桜の枝を自分の後ろに隠した。
「…違うよ。
ほら、あそこの雀が折っていったんだよ。」
「…雀にそんな力はないと思いますが…」
気まずそうにうつむく少年。
そんな少年に骸は苦笑した。
「僕はうそつきは嫌いです。」
「…うん。」
「でも、君は僕が桜が好きだから、
わざわざ僕にくれたんですよね。」
少年は静かに頷いた。