月下の記憶
□月下の記憶 第九夜
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「あの子は僕のものだよ」
そういって笑う男の目は何処までも冷たく。
まるで獲物を捕らえようとする鷹のようだった。
固まったままの雲雀に、男は自身の後ろを指差した。
男は、先ほどとは別の、親しみやすそうな笑みを浮かべた。
「ほら、あそこの。
背が高い黒い建物に、
君が探している人がいると思うよ。」
その言葉を聞いた瞬間、雲雀は走り出した。
一刻も早く骸に会いたかったからでもあり、
一刻も早くこの男から離れたかったからでもあった。
白蘭は去っていく雲雀を面白そうに眺めて、
建物の陰に潜む影に話しかけた。
「人間ってちっぽけだよねぇ。
君もそう思わない?」
なにも言わずに白蘭の次の言葉を待つ影。
白蘭はその人物にあるものを手渡した。
「“これ“をうまく使ってね」
影はうなずいた。
悲鳴を上げ、怯える顔を見るのはこれで何度目だろう。
目の前の男達を倒しながら、骸はそんなことを考えた。
骸が最後の一人を倒したのと、
雲雀が扉を開けたのはほぼ同時だった。