月下の記憶
□月下の記憶 第四夜
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日本刀は見事にかべに突き刺さっていた。
殺気に気づいた骸はとっさによけたが、
よけていなければあの世行きだっただろう。
「・・・へぇ・・・」
「・・・貴方が今江戸で噂の辻斬りさんですか?」
「・・・だったらどうするの?」
「ほうっておくわけにはいきませんね。」
相手がかすかに笑ったのがわかる。
月の光に照らされた顔は――
「藤娘!?」
「朝一番の公演に見に来てた客だね?
君の事はまあまあ気に入ってたんだけど・・・
見られてしまってはしょうがないよね。
・・・・・・死んでくれる?」
血で濡れたままの日本刀を骸に向ける”藤娘”。