長編番外編
□藍色の記憶
1ページ/5ページ
―物心ついたときから独りだった―・・・
「おぃっ、そっちに行ったぞ!!」
「くそっ、なんてすばしっこい・・・!!」
夜の江戸の町を駆ける黒い影。
その影はとても、小柄だった。
「はぁ・・・はぁ・・・はっ・・・」
その小柄な影は、細い路地の物陰に隠れると、どさりとその場に座り込んだ。
「う・・・」
右腕をかばうようにして座り込む小柄な影は、まだ10代前半の少女だった。
(怪我、しちゃった・・・)
利き腕の右腕を傷つけられてしまった―
(今度こそ・・・つかまってしまうかも・・・)
少女はひざに顔をうずめた。
その少女は、捨て子だった。
親を知らない少女は、生きるために何でもしなければならなかった。
そう、それが例え、
悪いことだとしても―
「人間なんて・・・不公平だわ。」
ぼそりとつぶやいた言葉。
「それは僕も同感ですねぇ。」
まさか返事が返ってくるなんて思いもよらなかった。