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□カクテルパーティー
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六道骸は、幸せを必要としない人間だった。




骸は幸せになる要素をたくさん持っている。

なのにそれを自分で壊そうとするのだから本当に哀れだ。

そう、思っていた。






「いつものを二つ。」


かしこまりました、と柔和な笑みを浮かべるマスター。

彼のカクテルは骸のお気に入りだ。

スーツ姿の男二人が並んで座っている姿は周りから見たらさぞかし滑稽だろう。

雲雀はギロリ、と隣の男を睨んだ。


「勝手につれてきて、しかも勝手に頼まないでくれる?

 君が飲むものはきつくて僕の口に合わないんだよ。」


「慣れですよ、慣れ。

 僕の恋人なんですから、これくらいは飲めるようになっていただかないと。」


骸は雲雀の睨みと言葉を受けても、悪びれた様子もなくそう言った。

さらに文句を言おうとする雲雀を遮るように、骸は言葉を続けた。

口元に笑みを貼り付けたまま。


「恭弥、クロームをよろしくお願いしますね。」


「…どういう意味?」


「そのままの意味ですよ。

 彼女はもう必要なくなった。

 ただそれだけです。」


「……」


「準備が出来たので、そろそろ…本格的に始めようかと思いまして。」


何を、とは聞かなかった。

雲雀は、相変わらず胡散臭い笑みを浮かべている目の前の男が本当に哀れだと思った。

彼は幸せを壊しているのではなく、
幸せになるということを知らないのだ。

マフィアを殲滅することを生きる糧としてきた男だから、それは仕方がないことなのかもしれない。

もし、それを達成したとき彼はどうなるのだろう。

そのときのことを考えて雲雀は静かに目を閉じた。




綺麗な色をしたカクテルは、やはり自分の口には合わなかった。
 

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