聖皇女コーネリア

□第15章
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「何の相談だよ、何の……」

全くブレない様子の王太子を呆れ顔で見つめ、ディオンは盛大な溜息をつく。
女好きもここまでくれば、いっそ清々しいとさえ思えてしまう。

……などとうっかり本人の前で口にしてしまえば、調子に乗るのは必須。
口が裂けても言ってはならないだろう。

「愛のご相談はひとまず置いておきまして……。わたくし、神官の方に様子を伺って参りますね」

口説き文句を軽くスルーし、コーネリアが椅子から立ちあがる。
と、その時だった。

ノックの音が響き、神官長ユリシアの声が聞こえてくる。

「コーネリア様、皆様方。お待たせ致しました」

返事をすると、ミラネそして何故かアケメネスを伴った神官長が入室してきた。
更に後から、精悍な顔付きの初老の男性が続けて入ってくる。

彼は神聖騎士と似たような恰好をしているが、意匠がどことなく違う。
恐らくは指揮官クラスの人物と思えた。

「待たせたな! 女神の許しはバッチリしっかりちゃっかり取ってきたぞ!」

両手に腰を当て、えへんとVサインを決める聖神官。
そんな彼女の耳を軽く引っ張り、巨乳神官長は小言を口にした。

「ミ・ラ・ネ・さ・ま? お行儀が悪いですよ〜?」

「いたたたっ! や、やめるのじゃぁ〜!」

などと言ってはいるが、実際は大して強い力で引っ張ってはいない。
だからミラネは、痛い思いをしているわけではないのだ。

けれども、傍目から見ているコーネリア達には分からないようで……。

「あ、あの〜。その辺で勘弁してやってもいいんじゃないか?」

ディオンが遠慮がちに声をかける。

「あらあら、オホホホ。わたくしったら、聖皇女候補様達に見っともない所をお見せしてしまって……!」

「ディオンよ、よくぞわらわを悪しき暗黒デカ乳魔女から救い出してくれたな! 褒美としてそなたのホッペにちゅーしてやろうぞ!」

解放された喜びのあまりにそんな事を口にするも、背後から漂うドス黒いオーラに「ヒィッ」と引きつった声を漏らす。
ミラネが後ろを向くと、そこには……。

「暗黒デカ乳魔女って、このわたくしの事かしらぁ?」

満面の笑みで姪を見つめる、ユリシアの姿があった。

「全く、怒られると分かっていて何故挑発するような事を……」

それまで黙っていた初老の男性が、頭を抱えて溜息をつく。
彼から苦労人のオーラを感じ取り、コーネリア達は密かに同情したという。



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