聖皇女コーネリア

□第11章
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覇気(元々、持ち合わせていないが)も気力も無くした彼は、フェイス達に見捨てられた事と摘まみ食いされた事を怒ったりはしなかった。
そんな事など、もうどうでも良くなってしまったのだろう。

道端の石ころや雑草のようにただ時の流れに身を任せ、無気力に最期の時まで過ごすのみ……。

「……はあぁ。ゆくゆくはイケメンの金持ちと結婚して、玉の輿に乗るつもりだったのにぃ」

足を抱えて蹲る、いわゆる三角座りの体制でニーナがため息をつく。
なんとも俗っぽい夢である。

これまで散々悪事に手を染めてきたのだから、罰を受けるのは当然の報いだ。
どんなにその運命を受け入れられなかったとしても、最早避ける事は出来ない。

「何か」が起きない限りは……。


ルーフェンの抱える事情を聞いたコーネリアは、その話にたいへん心を痛めていた。
それと同時に彼ら姉弟の両親や貸金屋、腐敗したソプラニア政府に対して憤りを感じてしまう。

当然ながら旅の最中でステラ本人かあるいは手がかりを見つければ、必ずルーフェンの故郷へ連絡を入れる事を誓った。

「ルーフェンさん、お姉様が見つかる事を心からお祈りしますね」

「ありがとうございます。僕は絶対に姉さんを探し出してみせますよ」

コーネリアに励まされ、ルーフェンは嬉しそうに頷く。

これまで彼は孤独であった。
旅に同行者はいたけれども、仲間……ましてや友人とすら呼べないような存在でしかない。
憎い貸金屋から遣わされた監視役になど、心許せるはずがないだろう。

だが、ディオンやコーネリア達のような理解者、協力者と出会えて非常に肩の荷が幾分か軽くなった気がしたのだ。
期限までに姉ステラを連れ帰らなければ自身の命のみではなく、領民らの命も危うい。
それ故にルーフェンは大きな重圧を感じていた。

事情を把握し、なおかつ協力してくれる者達が現れたのは、彼にとってまさしく喜ばしい出来事なのだろう。

――とはいえ、ソプラニア国の問題が気がかりですわね。

魔の王を封じる事が最優先事項であるコーネリアは、それ以外の事象に気を取られてはならない。
その点で言えばこれまでの行動は、はっきり言って無駄が多かった。
順調にいっていたならば、今頃はとっくに聖地へ足を踏み入れていたはずである。
だが、様々なトラブルに見舞われコーネリアの旅程は、思ったより遅れてしまっていた。


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