聖皇女コーネリア

□第10章
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こちらに来る途中、廊下で聖騎士を見かけたからだ。

三人組に気付かれないよう、慎重な足取りでそっと立ち去ろうとするが……。

「きゃっ!」

あろうことかバランスを崩して転んでしまう。
コーネリアがあげた小さな悲鳴と転んだ際に立てた音は、しっかりとフェイス達の耳に届いてしまっていた。

「そこに誰かいるのか?」

訝しげにそう尋ねながら、フェイスが近付いてくる。

――いけない! 早く立ち上がらないと……!

しかし、足が痛くてなかなか立つ事が出来ない。
おそらく、転んだ時に軽く捻挫してしまったのだろう。

まごまごしている間に彼はすぐ側までやって来て、コーネリアを強引に振り向かせる。

「なあ、返事ぐらいしたら……って、お前はあん時の!」

顔を見た瞬間、フェイスは驚きの声をあげた。
危惧していた通り、やはりすぐに見抜かれてしまった。

後方にいるニーナと親分格も驚愕の表情をしている。
だが、思わぬ場所で逃した獲物と再会した喜びに、すぐ様ニヤリとした笑みを浮かべた。

「あ〜ら、誰かと思ったらコーネちゃんじゃないのぉ。久しぶりねぇ、元気にしてた〜?」

不気味な程に甘ったるい猫撫で声で、ニーナが話しかけてきた。
事情を知らぬ第三者から見れば、まるで旧友との再会を喜ぶ姿にしか思えないだろう。

綺麗な顔に“友好的”な笑顔を浮かべ、彼女はコーネリアに近付いてくる。
当然、親分格も一緒にだ。

「あら、足を痛めちゃったの? うふふ、ドジねぇ」

「ヒヒヒ、なんなら俺がさすってあげようか?」

下心丸出しでそう言い、親分格の男が手を伸ばす。
それを手で払いのけながら、怯えたように声をあげる。

「さ、触らないで下さい……!」

「おお、怖い怖い。別にとって食おうとしているわけじゃあないのになぁ」

白々しい事を言って男は肩を竦めた。
彼をキッと睨み付け、コーネリアは問い詰める。

「誰かを拐かす相談をしていましたよね? 次はどの女性を標的になさるおつもりですか?」

その途端、男は下卑た笑みを引っ込め、冷ややかな目を向けてきた。
いかにも悪役じみた表情である。

「ふん、聞いていたのか」

「聞かれたからには君を帰すわけにはいかないなぁ……」

薄ら笑いを浮かべながら、フェイスがそう言う。


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