聖皇女コーネリア
□第9章
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食事代は払えたものの、やはりお金がないと旅は続けられない。
ギルドで仕事を受けるには、契約金が必要である。
原則として契約金は現金払いのみなので、装飾品があっても門前払いだ。
どうしようもなくなって、コーネリア達に頼み込んできたのだろう。
「事情は分かったけどよ……。なら、貸金屋〈かしきんや〉で工面すりゃいいじゃねぇか」
貸金屋とは呼んで字のごとく、お金を貸してくれるお店である。
ただし、利息がついてしまうが。
「『連帯保証人になるのと、借金だけはするな』とお祖父様が遺言を残されたので、利用するつもりはございません!」
「はあ……」
きっぱりと言い放つエディへ、曖昧に頷くしかできないコーネリア。
「とりあえず、定期巡礼船の運賃だけお借りするつもりだったんですよ。祖国に帰り着くまでに必要なお金は、向こうで援助して貰えばいいですし」
援助、という単語に二人は首を傾げる。
神聖教がそういった類の支援をしていると、聞いた事がないからだ。
「実はこれでも僕、それなりの身分でしてね。家の名と身元さえ証明出来れば、何とかして貰えると思うんですよ」
神殿ならば貸金屋のように利息は発生しないでしょうし、とエディは付け加える。
「それが足りなくなってきたら、ギルドで依頼を受けて稼げばいいですしね」
一応、仕事をするという気はあるようだ。
「て事は、金を借りる為にあっちへ渡るのか? 女神の罰が当たっても知らないぜ……」
この言葉に対し、エディは首を横に振る。
彼は元から聖地エイディン島を目指しているとの事らしい。
ひととおりの話を聞いたコーネリアは、思い悩んでしまう。
基本的に困っている人は放っておけない性分な為、お金を貸すかどうか迷っているのだ。
――特に大金を要求されたわけではありませんし……。
悩む彼女を後押しするかのように、間もなく出航時刻である事を告げる声が響く。
意を決するとコーネリアは袋からお金を取り出し、エディの手に握らせる。
「一人分の乗船券代です。さあ、急いで買いに行きませんと船が出てしまいますよ」
彼女がそう言うと、エディの表情がパアァッと嬉しそうに輝いた。
両手で腕を握りしめ、何度もお礼を述べる。
「ありがとうございます、ありがとうございます! このご恩は一生忘れません!」
後程、船の中でまたお会いしましょうと言い残し、彼は乗船券を買いに走っていった。
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