聖皇女コーネリア

□第7章
2ページ/16ページ

計画は密やかに実行され、事故に見せかけて第二妃は殺害されたのである。
同時にディオンの命も狙われたが、彼は危うく一命を取り留める事が出来た。

魔の王はすぐに第二妃暗殺は、正妃一派の仕業であると見抜いた。
事件に関わった者達はその親類縁者に至るまで、ことごとく処刑された。
女、子ども関係なく粛清は行われたという。

主犯である正妃とその息子だけは、処罰を逃れる事が出来た。
王家に連なる名家の出身だった為、彼女らは処刑されずに済んだのである。

ただし、魔の王は永久に正妃と臥所を共にしないと宣言したのだった。
また、彼女は城から出る事を一生許されなくなった。

正妃との子である第一王子はその地位を剥奪され、臣下へと下る事を余儀なくされたのである。
王もそれ以来、彼を息子として扱わなくなってしまった。

その元第一王子は現在、四天王の位を擁している。

かくして、望んでもいない王位継承権を手にしたディオン。
彼はそんな物より、大好きな母と穏やかに暮らす事のみを望んでいた。

人間である母は短命であり、封印が解ける日まで生きる事は出来ない。
死ぬまで一生、故郷の家族に会えない彼女にとって、ディオンと魔の王だけが心の支えだった。
半魔という理由で蔑まれる彼にとっても、両親のみが唯一の味方たる存在であった。

しかし、父の気紛れによって結果的に母は亡くなり、自分は望まぬ継承権を押しつけられてしまったのである。

もう命を狙われる事はなくなったが、正妃からは顔を合わせる度に罵られた。

――お前さえ生まれてこなければ。
――あの時、母親のようにお前も死ねば良かったのに。

呪詛のような言葉を容赦なく浴びせられ、激しい憎しみをぶつけられた。
他の魔者達も陰では相変わらず、ディオンを見下して口さがない事を言っていた。

いつしか、ディオンは全てを憎むようになったのである。
元々の原因を作った父、魔の王。
彼さえ余計な事をしなければ……否、戯れに母を妃になどしなければ、ディオンは辛い思いをせずに済んだだろう。

自身の存在を否定する事になろうとも、彼はそう思わずにいられなかった。

母を死に追いやった者達。
連中も憎しみの対象となったが、処刑されており生きてはいない。
恨みの感情は魔者全体に向けられた。
ディオンは次第に魔物も憎むようになったのである。


次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ