聖皇女コーネリア

□第6章
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何度も頭を下げるコーネリアに、ディオンは優しく声をかける。

「もういい……。謝らなくていいから……。コーネが悪い訳じゃないさ。まさか、あんな事になるなんて、誰にも予想出来ないだろうし」

確かに彼の言う通りだ。
ただ外を歩いていただけで、よそ者という理由だけで襲われると予想出来る者は、ほぼいないはずである。

だが、コーネリアは頑なだった。
ディオンの話を聞いても罪悪感は消えず、下唇を噛んで俯いてしまう。

ぽつりと漏れた言葉は、ネガティブなもの。

「……いいえ、私が悪いんです。私が軽はずみな行動をしなければ、こんな事態にはならなかったはずですから。ディオンさんが乱暴される事……だって」

震える声でそう言うと、コーネリアは瞼をそっと伏せる。

彼女は分かっていたのだ。
自分がいたせいで、ディオンが逃げられなかった事を。

大勢の村人に囲まれた状況であっても、彼一人ならばあの場から逃げ出す事は容易かったはず。
しかし、コーネリアが早々に捕まってしまった為、ディオンも捕まるほかなかったのだ。

トラブルの原因を招いたあげく、足手まといとなってしまった……。
その事にコーネリアはひたすら胸を痛め、深く反省しているのである。

「私が悪かったんです。私が一人で出かけさえしなければ、村の人達に因縁をつけられる事もなかったはずです。……こうして囚われる事にもならなかったはずですから」

「……あのなあ、いい加減にしてくれよ!」

突如、声を荒げたディオン。
コーネリアは思わず身を竦ませてしまう。
恐る恐る顔を上げて彼の表情を伺えば、怒ったような顔をしていた。

「ディ、ディオンさん……?」

「さっきから聞いてれば、後ろ向きな発言ばかりしやがって。俺は過ぎた事をいつまでもグダグダ言うのは嫌いなんだよ!」

容赦のない言葉を浴びせるディオン。
だが、それはコーネリアを嫌っているからではない。

幾らか好意――殆ど仲間意識でしかないのだろうが――を抱いている相手だからこそ、気になる所を指摘しようと思ったのだろう。

「確かにコーネの言う事にも一理ある。だけどよ、ありゃあ明らかに村人どもに非があったと思うぜ? ただ外を出歩いているだけの女を襲う方が、十中八九悪いに決まっているさ」


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