聖皇女コーネリア

□第5章
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アリストレア皇国の軍事力の要である皇国騎士団は皇都アリストテレシアや、聖地エイディン島への玄関口ササンなど重要な拠点にしか配備されていない。

だからこそ、冒険者や魔物狩りの存在が必要となってくるのだ。
また、神聖教が抱える僧兵組織である聖騎士団も、定期的に世界を巡って魔物を退治している。

完全に魔の軍勢の支配下におかれた地域以外……の話だが。

「おいおい、縁起でもない事言うなよ……。てか、もしそうなら俺達が村に入った時点で、魔物か魔者に捕まってるだろ」

「そう……ですよね。ごめんなさい、おかしな事を言ってしまって」

あまりにも情報が少な過ぎる為、ここで考えていても埒があかないだろう。

「とにかくさ、宿に行けば主人なり女将さんがいるだろ。その人に村で何があったか聞いてみようぜ」

ディオンのその言葉にコーネリアは頷く。
まずは情報を集めるのが先決だ。

一抹の不安を抱えながらも、コーネリア達は歩き続けるのだった。


宿屋を捜そうにも初めて来る村なので、どこに何があるか分からない。
ディオンもロデリア村に来たのは初めてなようで、宛てにはならなかった。
外を歩く村人がいれば場所を訊ねる事も出来たのだろうが……。

「……?」

不意にディオンが立ち止まる。急に立ち止まった彼に、コーネリアは怪訝そうに尋ねた。

「どうしたんですか、ディオンさん」

ディオンの視線は近くの民家へと向いていた。
何の変哲もない、ごく普通の家である。
これといって不審な点は見受けられない。

「あのお家が……どうかしたんですか?」

「……人の気配を感じるんだ。あの家だけじゃねえ、あちこちからだ」

じっと民家を見据えたまま、ディオンが答えた。
人がいると知りコーネリアは安堵する。

――良かったですわ。村が襲われたのではありませんのね。

だが、ディオンの表情はどこか不愉快そうだった。

「胸くそ悪ぃ……。俺らの事をジロジロと見やがって」

苛立たしげにそう吐き捨てる。
彼曰わく、どうやら村人達は家の中に引っ込んでいるらしい……との事。
そして、家の中からコーネリア達を観察しているらしいのだ。

ディオンに言われてみるまで気付かなかったが、窓越しにこちらを伺う人の顔をコーネリアも確認する。


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