聖皇女コーネリア

□第4章
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青年は木賃宿から出てきたばかりだった。
スラムにある木賃宿はサービスは最悪(むしろサービスなどない!)だが、宿代は格安である。
それ故、皇都アリストテレシアを訪れる冒険者の中には資金節約の為、あえて木賃宿に泊まる者がいるのだ。

恐らくこの青年もそうなのだろう。

青年が路地裏の前を通りがかると、大きな袋を担いだ三人組が周囲を警戒しながら出てきた。
怪しいことこの上ない。

冒険者風の青年は怪訝そうに彼らを見つめる。
その時、青年の目の前で袋がモゾモゾと動いてしまった。
ほんの僅かな動きだったが、しっかりと目に入ってきたのである。

――動いた!?

“生きた何か”が入っているのは明白だ。
それもその通り、あの袋の中にはコーネリアが入れられているのだから……。
動いてしまったのは恐らく、眠っている状態で身じろぎしてしまったからなのだろう。

袋の大きさからして中に人間がいるに違いないと、青年は察する。
気付くやいなや行動が素早かった。

「おい、そこの三人。ちょっと止まってくれないか?」

呼び止められた三人は一瞬、ぎくりとしてしまう。
後ろめたい事があるのは明らかだ。

「兄さん、何の用だ? 俺らは急いでんだけどなあ」

ボスらしき中年男が愛想笑いを浮かべながら言う。

「……お前ら、そのデッカい袋の中見せてみろ」

青年のその言葉に三人は、心の中で小さく舌打ちする。
せっかく上手くいきかけていた“仕事”だというのに、横やりを入れられそうになったのが気に食わないのだろう。

「ちょっと、なんで赤の他人のアンタに見せなきゃなんないわけ〜?」

「プ、プライバシーの侵害だ!」

ニーナは睨み、フェイスは抗議の声をあげる。
彼らが中を見せまいとすればする程、青年はますます不信感を強めていく。

「……そんなに拒否するってこたぁ、何か後ろめたい事があるんだな?」

青年のその言葉に、三人はあからさまにギクリとしてみせる。
実に分かり易い反応だ。

所詮は小悪党の集まり。
その程度の器にしかすぎないのだろう。

呆れたのか青年は溜め息を一つつく。

――こいつら、格好からして冒険者崩れだろうな。はあ、同業者として情けないぜ……。


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